実質賃金プラスは「賞与効果」だけか 所定内給与4.1%増、一般労働者・パートでも伸び

2026年09月08日 11:03

画・2019年夏季ボーナス。74万3588円。製造で減少、非製造で増加。

2026年7月の所定内給与は前年同月比4.1%増。一般労働者、パートタイム労働者の双方で賃金の伸びが確認された(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

厚生労働省が8日発表した2026年7月の毎月勤労統計調査速報で、実質賃金は前年同月比2.4%増となり7カ月連続のプラスを記録しました。ただし7月は夏の賞与が支給される時期でもあり、1人平均の現金給与総額(43万6401円)には特別に支払われた給与(13万4819円)が含まれています。では、賞与を除いた毎月の定期給与や所定内給与などの動きはどうなっているのでしょうか。統計の内訳を紐解くと、きまって支給する給与は4.1%増、所定内給与も4.1%増を記録。一般労働者の所定内給与が3.9%増、パートタイム労働者の時間当たり所定内給与も5.7%増と、一般労働者、パートタイム労働者の双方で前年同月を上回る伸びが確認されています。

本文
 厚生労働省が8日に公表した2026年7月分の毎月勤労統計調査結果速報(事業所規模5人以上)では、実質賃金が前年同月比2.4%増と7カ月連続のプラスを記録し、名目賃金の伸びが物価の上昇を上回る推移が続いていることが示されました。

 しかし、この結果を読み解くうえで注意が必要なのは、7月統計における「43万6401円」という現金給与総額の数字そのものです。

■「43万6401円」は毎月の月給ではない

 現金給与総額の43万6401円(前年同月比4.7%増)は、毎月決まって支給される給与に、夏冬の賞与や期末手当といった一時金である「特別に支払われた給与」を合算したものです。7月の特別給与は13万4819円(前年同月比6.3%増)となりました。

 したがって、この数字をもって「平均的な労働者の毎月の給与が43万円を超えた」と解釈することはできません。賞与などの一時的な要因を除き、毎月安定して支払われる賃金の動向を測るには、統計の内部構造を分解して見る必要があります。

■毎月支払われる「所定内給与」も4.1%増

 賞与等を除く毎月の定期給与である「きまって支給する給与」は30万1582円で、前年同月比4.1%増加しました。さらに、ここから残業代や休日出勤手当などの超過労働給与(所定外給与)を除いた「所定内給与」は28万797円となり、こちらも前年同月比4.1%増を記録しました。

 なお、「所定内給与」にはいわゆる基本給のほか、職務手当、地域手当、家族手当などが含まれます。厚労省によると、所定内給与の前年同月比が3%以上増加するのは7カ月連続となり、これは1992年10月以来、33年9カ月ぶりの長さを更新しています。

 今回の7月統計は、賞与等の増加が現金給与総額を引き上げただけでなく、毎月の各種手当等を含む所定内給与においても前年を上回る伸びが持続していることを示しています。

■一般労働者・パートともに前年を上回る伸び

 就業形態別の内訳を見ると、一般労働者とパートタイム労働者の双方で、前年同月を上回る伸びが確認できます。

 フルタイム中心の「一般労働者」を見ると、現金給与総額は578,123円(前年同月比4.7%増)となり、そのうち所定内給与は356,413円(同3.9%増)でした。厚労省によると、一般労働者の現金給与総額が6カ月連続で3%以上伸び、所定内給与が7カ月連続で3%以上伸びたことは、いずれも比較可能な1994年1月の調査開始以来初めての連続記録となります。

 一方、「パートタイム労働者」の動向を見ても、時間当たりの所定内給与は1,460円となり、前年同月比で5.7%増加しました。時間当たり給与の前年同月比プラスは61カ月(5年1カ月)連続となっています。

 一般労働者の月額所定内給与(+3.9%)とパートタイム労働者の時給(+5.7%)は算出基準が異なるため金額の直接比較はできませんが、一般労働者、パートタイム労働者の双方で、前年同月を上回る賃金の伸びが確認されています。

■賃金4.7%増対物価2.2%上昇の構図

 これらの名目賃金の伸びに対し、実質賃金の算出に用いられる「消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)」は7月に前年同月比2.2%の上昇となりました。名目現金給与総額の伸び率(4.7%増)が物価上昇率(2.2%)を上回った結果、実質賃金指数は前年同月比2.4%増となり、7カ月連続で前年同月を上回る水準を維持しています。

 ただし、毎月勤労統計から確認できるのは「賃金の購買力が前年同月と比べて増している」という点までです。平均値の伸びであるため個別企業やすべての労働者に一律で賃上げが行き渡っているわけではなく、また可処分所得や実際の家計消費支出の動向は別の統計で把握する必要があるため、「実質賃金のプラスが即座に生活のゆとりや消費拡大につながっている」と断定することはできません。

■長期比較における「統計の断層」と速報性

 さらに、過去の統計データと長期的に比較・検証する際には、構造上の留意点が存在します。毎月勤労統計では2026年1月分において調査対象事業所の部分入れ替えが実施されました。新旧データを比較した際、現金給与総額でマイナス1,582円(-0.5%)、きまって支給する給与でマイナス801円(-0.3%)の断層が生じています。また、今回公表されたデータは速報値であり、今後の確報値公表時に数値が改訂される可能性がある点も頭に入れておく必要があります。

 7月の賃金統計は、実質賃金2.4%増という表面的な結果だけでなく、賞与を除く毎月の所定内給与や一般・パートそれぞれの賃金水準が伸びを維持していることを提示しています。今後は、この基礎的な賃金の伸びが物価上昇を上回る状態をどれだけ維持できるか、そして実際の家計消費や購買行動にどう反映されていくのかが重要な観察ポイントとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)