ニデック、品質・産地表示で不適切行為850件 検査データ改ざんも、調査委が経営体制の構造問題を指摘

2026年09月06日 10:55

今回のニュースのポイント

ニデックは2026年9月4日、外部専門家で構成する調査委員会からの調査報告書を公表しました。グループ内で確認された不適切行為は、品質不適切行為844件(うち重要品質事案60件)と産地表示等不適切行為6件の計850件に上ります。品質問題の95.4%は顧客の事前承認を経ない「4M変更違反」が占めた一方、一部では検査データの改ざんやねつ造も認定されました。調査委員会は、拡大する組織規模に対し永守重信氏への権限集中や過度な業績目標を維持したことなど、不適切な行為を許した構造的課題を指摘しています。

本文
 ニデックは2026年9月4日、グループ内で発生した品質不適切行為などに関する調査委員会の調査報告書を公表しました。外部専門家による約3カ月半の調査を経て、品質および産地表示等に関する不適切行為が計850件認定されました。

■不適切行為は計850件、95%超が手続き違反も改ざん・ねつ造が22件

 報告書によると、認められた不適切行為は品質不適切行為が844件、産地表示等不適切行為が6件の計850件です。

 品質不適切行為844件の類型別内訳は、製造における人・機械・材料・方法の変更時に顧客の事前承認などを得ない「4M変更違反」が805件と全体の95.4%を占めました。次いで、試験・検査結果の改ざん・ねつ造が22件(2.6%)、検査・製造条件違反が11件(1.3%)、規格外品・未承認品の使用・出荷が4件(0.5%)、部材・材料に関する記録の作成・管理違反が2件(0.2%)となっています。

 調査委員会は、品質不適切行為844件のうち、役員や拠点長の関与、公的機関向け製品、法令・認証違反の疑い、リコールの可能性があると評価された事案、安全性に影響する技術的リスクが高いと評価された事案など「重要品質基準」に該当する60件を「重要品質事案」に分類しました。全844件では4M変更違反が9割以上を占めるのに対し、重要品質事案60件においては4M変更違反が28件(46.7%)にとどまり、試験・検査結果の改ざん・ねつ造が22件(36.7%)と高い割合を示しています。

■強度検査せず「架空の数値」、実測値書き換えや無断リワークも

 重要品質事案の代表例として、以下のような具体的行為が調査委員会により認定されました。

・ニデックインスツルメンツ:必要な強度検査を実施せず、定型的な架空の数値を記載した検査成績表を顧客へ提出。

・小型モータ事業本部:IT機器用プレス製品の出荷検査データを、実際の測定値とは異なる数値へ書き換え。

・車載既存事業本部:顧客の事前承認を得ず、不適合となった部品の一部を再利用してリワーク(再加工等)を実施。

・ニデックモビリティ:顧客との合意で禁止されていた再生樹脂を、無断で車載用内装部品に配合。

・ニデックテクノモータ:必要な含有化学物質情報を確認しないまま、顧客要求に適合していると連絡して製品を出荷。

 また、産地表示等の不適切行為6件では、ニデックドライブテクノロジーにおいて海外の主要工程を経た機械部品に「Japan」と表示した事例や、車載事業部において工程の一部を他国に移管した後も産地判定を見直さず、日本原産とするサプライヤー証明書を提出した事案などが確認されました。

■9万7663人を調査、回答率は92.1%

 今回の調査にあたり、調査委員会は生産・開発305拠点の全役職員9万7663人を対象にアンケートを実施し、8万9973人から回答(回答率92.1%)を得ました。さらに16拠点ではAIアバターを活用した聞き取りを行い、新たな疑い事案を抽出したほか、現在・過去の役員・執行役員計31人を対象とした電子メール等のフォレンジック調査を実施しました。

■調査委が指摘した「永守氏への権限集中」と過度な利益目標

 調査委員会は、不適切な行為が反復・継続した背景にある組織の「不健全な状態」を分析し、経営・コーポレート・現場の各レイヤーにおける構造的問題を指摘しました。

 報告書は、M&Aによりグループの規模と複雑性が急速に拡大したにもかかわらず、「永守氏への権限集中とマイクロマネジメントを基礎とする経営体制」が維持され、ガバナンスに必要な透明性が十分に確保されなかったと言及。さらに、事業の実力や実態に見合わない短期的な利益目標が設定され、未達成の場合に厳しい叱責を伴う業績管理が行われた結果、現場で品質保証プロセスが業績達成の要請に劣後する構造が定着したと分析しています。

 一方で調査委員会は、役員や執行役員が個別の品質不適切行為を具体的に指示したり、黙認したりしていたことを明確に示す電子メール等は確認されなかったとしています。経営陣による個別不正の直接指示ではなく、不健全な風土や体制を放置・形成した構造的問題であるとの位置づけです。

■会計問題と共通する「物言えぬ風土」、再発防止へ

 ニデック側は今回の調査結果を受け、「過度な業績プレッシャーや物言えぬ風土」といった課題について、先に第三者委員会が調査した不適切会計問題の原因と共通する根本的な経営課題であるとの認識を示しました。個別の問題としてではなく、再生に向け一体となって取り組むとしています。

 製品への影響について、ニデックは自社で実施した技術・品質検証の結果として、現時点で製品の安全性に影響する事象は確認されていないと説明しています(製品機能に関しては2件で顧客と協議継続)。ただし、調査委員会の調査目的には、会社側が行った安全性やリコールリスク等の評価自体の妥当性を検証することは含まれていません。

 ニデックは再発防止策として、グローバル品質保証規程を改訂し、各事業本部やグループ会社の品質保証責任者が出荷停止権限を持つことを周知・徹底するほか、レポートラインの見直しや品質監査の実施、品質意見箱の常設などを進める方針です。また、調査で明らかになった事実関係に基づき、今後、適切な人事処分を実施する方針です。

 グループの急速な規模拡大に見合う経営体制の整備が進まず、権限集中や過度な業績目標などの構造的問題が指摘される中、同社が進める組織風土や制度の抜本的改革を実際の組織運営に定着させられるかが今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)