今回のニュースのポイント
TSMCとASMLは8日、次世代のHigh NA EUV(極端紫外線)露光装置で使うフォトマスクを、現在の6インチから12インチへ大型化する業界横断イニシアチブの立ち上げを発表しました。AI向け半導体の構造複雑化でHigh NA EUVが必要な工程が増える見通しの中、原版を大型化することで生産性向上やコスト低減を目指します。2030年からTSMCがまず現行の6インチマスクでHigh NA EUVを量産導入し、2031年までに12インチのパイロットライン構築を目標とし、2033年までに12インチ対応システムの先端生産投入を目指すロードマップです。
本文
世界最大級の半導体受託製造企業である台湾TSMCと、半導体露光装置最大手であるオランダのASMLは8日、先端半導体の露光工程で用いるフォトマスクを、現行の6インチから12インチへと大型化させる業界横断のイニシアチブを立ち上げたと発表しました。
半導体は、シリコンウエハー上に微細な回路パターンを焼き付けて製造されます。その露光工程において、回路のパターンを描いた「原版」に当たる部材がフォトマスクです。今回の発表は、完成品であるチップのサイズ変更ではなく、製造工程で回路パターンを転写するための「原版」であるフォトマスクを、現行の6インチから12インチへ大型化しようという取り組みです。
12インチマスクへの移行により、ファブ(半導体製造工場)の生産性向上やチップ製造コストの低減、さらに現行の露光工程で生じる「ステッチング(画面繋ぎ合わせ)」に伴う制約の解消が期待されています。先端半導体の回路パターンが微細化・複雑化する中、露光効率を高めることが次世代チップのコストパフォーマンスを左右する重要な課題となっています。
ただし、注意が必要なのは技術の導入順序です。High NA EUV露光技術の導入にあたり、12インチマスクの存在が必須条件となるわけではありません。発表においてASMLとTSMCは、High NA EUV装置の量産導入について、まず現在普及している6インチのフォトマスクを用いて開始することを明確にしています。その上で、将来的に12インチマスクへ移行することで、High NA EUVの利点をさらに生かし、生産性向上などにつなげるという段階的なアプローチをとります。
High NA EUVは、従来のEUV露光をさらに高精細化し、より細かな回路パターンを形成する次世代の露光技術です。TSMCの見通しによれば、技術ノードが進むにつれてHigh NA EUVを必要とするレイヤー(層)の数は順次増加していくとされています。その主因として挙げられているのが、AIアプリケーション向け半導体で求められる、ますます複雑化するトランジスタ構造です。
こうした製造工程の高度化を見据え、両社は業界のエコシステム全体を巻き込んだロードマップを提示しました。まずTSMCは、2030年から先端ノードの量産工程においてASMLのHigh NA技術を導入する意向を示しています。この段階では現行の6インチマスクが使用されます。
続いて、今回のイニシアチブでは2031年までに12インチマスクのパイロットライン(試験生産ライン)を構築することを目標として掲げています。そして最終的に、2033年までに12インチ対応のHigh NA露光システムを先端ノードの生産へ投入できる状態を目指す構想です。
フォトマスクの規格変更は、露光装置メーカーやファブを運営する半導体メーカー2社だけで完結するものではありません。半導体メーカーやマスクサプライヤーなど、幅広いエコシステムの対応が関わる取り組みとなります。今回の発表でも、主要なエコシステムパートナーやサプライヤーがイベントに参加し、この移行に対する関心を示したとされています。
今回の発表は、すでに12インチマスクが完成したことや、業界の標準規格として決定したことを意味するものではありません。2031年のパイロットライン構築、2033年の先端ノード生産への投入を見据え、12インチへの移行を進めるための業界横断的なイニシアチブのスタートとなります。チップ自体の進化に合わせて、それを作る「原版」であるフォトマスクも、6インチから12インチへの移行に向けて動き始めています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













