実質賃金はプラス維持 物価上昇の落ち着きと賃上げが支える家計の購買力

2026年07月24日 17:44

画:取:事前シミュレーションで問題なし 育休明けの職場復帰

厚生労働省が公表した2026年5月の毎月勤労統計調査確報では、実質賃金が前年同月比1.6%増となった。物価上昇の落ち着きと賃上げの継続が、家計の購買力改善につながるかが注目される。(画像:イメージ)

今回のニュースのポイント

厚生労働省が公表した2026年5月の毎月勤労統計調査確報では、名目賃金は前年同月比3.3%増、実質賃金は「持家の帰属家賃を除く総合」を用いたベースで1.6%増となりました。賃上げの継続に加え、物価上昇率が落ち着いたことで、家計の購買力改善が数字にも表れ始めています。

本文
 総務省から公表された6月の全国消費者物価指数(CPI)では、総合指数の伸びが拡大しました。一方、その押し上げ要因は主にエネルギー価格であり、基調的な物価動向は比較的落ち着いていました。こうした物価環境を踏まえると、今回公表された5月の実質賃金改善の背景も理解しやすくなります。毎月勤労統計において家計の実感に近い指標として注目されるのは、名目上の支給額ではなく、実際にどれだけのモノやサービスを購入できるかを示す「実質賃金」です。

 厚生労働省が24日に発表した2026年5月の毎月勤労統計調査(確報・事業所規模5人以上)によると、1人あたりの現金給与総額(名目賃金)は前年同月比3.3%増となりました。一方、実質賃金も1.6%増となり、賃金の伸びが物価の上昇ペースを上回る状況が続いています。

 今回の実質賃金改善の大きな要因は、名目賃金の伸びに加え、実質化に用いる物価上昇率の伸びが相対的に落ち着いている点にあります。5月の現金給与総額が3.3%増となったのに対し、実質賃金の算出に用いられた消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の上昇率は前年同月比1.7%にとどまりました。賃金の伸びが物価上昇率を上回ったことが、実質賃金のプラス維持につながっています。

 また、ベースとなる基本給の上昇も全体を底支えしています。賃金の内訳を見ると、基本給にあたる「所定内給与」は前年同月比3.0%増となり、賞与などを含む「特別に支払われた給与」も同7.4%増を記録しました。さらに、フルタイムで働く一般労働者の所定内給与は3.6%増となっており、今年の春季労使交渉で実現した賃上げの流れが基本給にも反映されていることがうかがえます。

 もっとも、今回の結果をもって「家計の懐事情が十分に改善した」と見なすには慎重さが求められます。実質賃金は物価動向に大きく左右されるため、国際市況や為替の変動でエネルギーや食料品などの価格が再び急高下すれば、再び押し下げられるリスクを抱えています。さらに、業種や企業規模による賃上げの浸透ペースにはなおばらつきがあり、すべての働く人々に均等に波及しているわけではありません。

 今回の毎月勤労統計は、昨日公表された6月の全国消費者物価指数(CPI)と組み合わせて読み解くことで、その意味がより鮮明になります。物価動向全体を見渡すと、表面的な指数にはエネルギー要因による振れが見られるものの、生鮮食品やエネルギーを除く「基調的な物価動向」は小幅に鈍化するなど落ち着きが見られます。そこに企業の継続的な賃上げが重なったことで、実質賃金がプラス圏で推移する構図が成立しています。

 日本経済は現在、「物価の上昇が先行する局面」から、「賃金の伸びが物価に追いつき、購買力を下支えする局面」へと移行できるかどうか、今後を見極める上で注目される局面にあります。今回の統計は、実質賃金がプラスを保った事実だけでなく、その背後に「物価の伸びの落ち着き」と「基本給を中心とした賃上げの定着」が並存している点に意義があります。今後はこの傾向が持続し、実際の個人消費の力強い回復へと結びついていくかが焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)