FAX・メールが残る資産運用業界 金融庁が進めるデジタル改革とは

2026年07月27日 07:16

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金融庁は、資産運用会社と信託銀行の間でメールやFAX、手作業が残る現状を踏まえ、業務の標準化やデジタル化を進め、運用会社が本来の資産運用業務に専念できる環境整備を促している。

今回のニュースのポイント

金融庁は、資産運用会社と信託銀行の間でメールやFAX、手作業が依然多く残っているとし、業務の標準化やデジタル化を進める必要性を指摘しました。資産運用会社が運用に専念できる環境整備も重要な課題としています。

本文
 金融庁が公表した「資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2026」では、日本の資産運用業界における深刻な課題が指摘されています。それは、資産運用会社と信託銀行の間で行われる事務手続きにおいて、標準化やデジタル化が遅れているという実態です。政府が「資産運用立国」を掲げ、国民の安定的な資産形成を推進する中、運用会社が非効率な事務作業に多くの時間を奪われていることが問題視されています。

 報告書が明らかにした現状は、高度な金融取引を行う業界のイメージとはかけ離れたものです。資産運用会社は、投資信託に組み入れる株式や債券などの取引を行った際、資産を管理する信託銀行に対して決済や時価情報などの連絡(指図)を行います。しかし、この情報伝達において、いまだにメールやFAXが多用されていることが確認されました。

 また、システムを補うために、Excelのマクロなどを利用した手作業でのデータ作成や、手動でのシステム入力が日常的に行われており、関係者の間で業務負荷が非常に大きい状態となっています。さらに、販売会社や顧客に向けた運用報告書についても、要望に応じて個別にカスタマイズし、紙で印刷・製本・郵送しているケースも多く存在します。

 なぜこのような非効率な状態が続いているのでしょうか。背景には、業務やデータの標準化不足があります。

 資産運用会社や事務を受託する機関、そして信託銀行は、それぞれ異なるシステムや独自のデータ項目・様式を使用しています。そのため、当事者の関係性ごとに個別のルールで情報のやり取りを行う「N対N」の複雑な構造が生じています。また、投資信託の基準価額(価格)を計算する「計理」業務でも、運用会社ごとに細かな計算方法が異なるため、受託側の信託銀行などで多大な対応コストが発生しています。

 この分野における世界との差も顕著です。海外の金融業界では、標準化されたデータフォーマットを用いてシステム同士を自動的に連携させ、人手を介さずに処理を完結させる「STP(Straight-Through Processing)」の導入が進んでいます。また、投資信託の価格計算についても、欧米では専門の機関が単独で行うのが一般的ですが、日本では運用会社側と信託銀行側の双方が別々に計算し、それを日々照合するという二重の手間をかけています。

 こうした業界内部の非効率は、最終的に投資家にも影響を及ぼします。資産運用会社にとって最も重要な役割は、独自の企業調査や市場分析を行い、投資家に中長期的なリターンをもたらすことです。しかし現状では、本来「運用」に注ぐべき貴重な人材と時間が、非競争領域である「事務作業」に割かれてしまっています。

 金融庁は、各社が個別に解決できる問題ではないとし、業界全体でのルール標準化やシステム連携の検討を求めています。運用会社が真に「運用に専念できる環境」を整備することこそが、日本の資産運用サービスの質を高め、ひいては私たちの資産形成を支える基盤となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)