脱炭素だけでは進まない時代へ 再エネと生物多様性の両立へ制度見直し

2026年07月29日 19:32

画・再生可能エネルキ_ーコスト低下により変わる未来

再生可能エネルギーの導入拡大が進む中、環境省は生物多様性との両立を図るため、種の保存法の見直しを検討している。写真は太陽光発電施設(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

環境省の有識者検討会は、絶滅のおそれのある野生動植物を保護する「種の保存法」の見直しに向けた報告書を取りまとめました。報告書では、再生可能エネルギーの導入拡大を進める一方、メガソーラーや風力発電などの開発による希少種への影響を抑えるため、生息地保全や事業者への対応強化を進める方向性を示しています。脱炭素の推進だけでなく、生物多様性との両立を制度面から図ることが新たな政策課題となっています。

本文
 環境省の「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の在り方検討会」は7月29日、種の保存法の見直しに向けた検討会報告書を公表しました。報告書では、国際的な生物多様性保全の要請が高まる中、再生可能エネルギーの導入拡大と希少野生動植物の保全を両立させるため、生息地等の保護区指定の推進や事業者に対する対応強化など、制度的な仕組みを見直す方向性を提示しています。

 制度見直しの背景には、国内外における生物多様性政策の急速な変化があります。2023年に採択された国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」では、2030年までに生物多様性の損失を止め回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」が掲げられました。一方で、日本の「生物多様性国家戦略2023-2030」の中間評価では、絶滅危惧種の状況改善に関する状態目標の進捗が「大きな進展なし」と評価されており、保全施策の強化が課題となっています。

 そうした中で課題として浮上しているのが、再生可能エネルギー開発と希少種保護との調和です。大規模太陽光発電(メガソーラー)の建設に伴う希少種の生息・生育環境の改変や、風力発電施設における希少猛禽類のバードストライク(衝突事故)などが課題として指摘されています。こうした状況を受け報告書では、優先的に保全すべき重要な生息地等保護区の設定推進に加え、希少種保全に重大な影響を与え得る開発行為に対して、事業者に配慮や適切な措置を求めるための制度的対応を検討する必要性を強調しています。

 開発ルールの実効性をいかに高めるかも大きなポイントです。現行制度では事業者への助言・指導が中心となっており、報告書ではその実効性の向上も課題として挙げています。また、環境省側が事業地における希少種の生息情報を事前に十分把握できない課題もありました。報告書では、希少種情報の収集・整備と慎重な提供を進めるとともに、事業者への助言・指導の実効性を担保する仕組みや、必要な情報収集の手続きを整える方向性を示しています。

 今回の報告書から読み取れるのは、エネルギー政策における評価軸の変化です。これまで再エネ拡大は、主に温室効果ガスの排出削減やエネルギー自給率向上といった「脱炭素・エネルギー安全保障」の文脈で推進されてきました。しかし、再エネ立地の拡大に伴い、生態系への影響が顕在化したことで、単に開発を促進または規制するのではなく、開発と自然保全を制度の中でいかに調和させるかが政策の焦点となりつつあります。

 環境省は本報告書を踏まえ、種の保存法の法改正に向けた具体的な制度設計を進める方針です。今後、生息地保護の要件や開発事業者への指導・措置のあり方が具体化されれば、再エネ事業者を含む開発事業者の立地選定や事業計画、企業の環境対応の実務にも影響を及ぼす可能性があります。2030年のネイチャーポジティブ達成に向け、エネルギー政策と生物多様性保全のルールをいかに整合させていくかが今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)