政府、「国家情報戦略」策定へ 経済安保・技術流出に対応、法制度やAI活用も検討

2026年09月29日 05:52

今回のニュースのポイント

政府は9月28日、第1回「インテリジェンス機能の強化に関する有識者会議」を開催しました。今年7月末に発足した「国家情報会議」および「国家情報局」による司令塔機能の整備に続く取り組みとして、政府全体の情報活動に関する中長期的な推進方策をまとめた「国家情報戦略」を策定・公表する方針を示しました。不当な工作を防ぐ法制度を含むカウンターインテリジェンスの強化、対外情報機能の充実、AIなどを活用した情報通信基盤の整備、経済安全保障分野でのサプライチェーン強化や国内製造基盤の維持、個人情報・プライバシー保護や民主的統制などを検討します。

本文
 政府は9月28日、首相官邸で「インテリジェンス機能の強化に関する有識者会議」の初会合を開催し、我が国のインテリジェンス機能を総合的に強化するための新たな国家戦略の策定に着手しました。高市総理大臣は会議の中で、現在の地政学的な国家間競争の激化や先端技術の不正流出、サイバー攻撃などの脅威を挙げ、政府の情報活動について中長期的な推進方策を取りまとめ「国家情報戦略」として公表する必要があるとの考えを表明しました。内閣官房の説明資料においても、中長期的な推進方策について文書を作成・公表するとしています。

 政府は2026年5月に成立した国家情報会議設置法に基づき、同年7月31日に総理を議長とする「国家情報会議」と、旧内閣情報調査室を発展的に改組した「国家情報局」を設置し、情報機能の司令塔体制を整えました。高市総理は、この司令塔機能の整備を「インテリジェンス改革の第一歩」と位置付けています。今回の有識者会議では、更なる取り組みとして、懸念国等による不当な工作に対処するための「法制度を含むカウンターインテリジェンスの強化」や、対外情報機能および各種情報収集・分析能力の充実に向けた検討を行います。

 特に経済安全保障の観点からは、サプライチェーンの途絶リスクや国内産業基盤への影響が課題として提示されました。政府説明資料では、他国における紛争や地政学的対立に起因する必要物資・重要資源の供給制限に対し、特定国に過度に依存しない強靱な供給網の構築が必要であると指摘しています。加えて、経済的合理性の追求を背景に国内の製造基盤が縮小している現状への危機感が示され、我が国の自律性向上や技術面での優位性、不可欠性の確保の観点から、国内製造基盤の維持・強化を課題に挙げています。

 また、民間企業や研究機関の先端技術を狙った工作やサイバーエスピオナージへの対応も重要項目とされています。AI技術については今後の経済活動や安全保障の優位性を左右する基盤と位置付けると同時に、政府自体の情報収集・分析能力の強化に向けてAIなどを活用した情報通信基盤を整備する必要性が挙げられました。想定される戦略の項目には、人的情報の収集体制強化やインテリジェンス人材の育成、情報部門と政策部門の分離による客観性の担保のほか、個人情報やプライバシーの保護、民主的統制なども含まれています。

 今回発足した有識者会議は、大学教授や法律家、サイバーセキュリティ専門家、企業関係者らで構成され、原則として2029年6月30日までの期限付きで議論を進めます。会議資料は原則公開し、議事要旨については発言者の氏名を付さない形で原則公開する運用となります。政府は今後、関係省庁との調整や有識者会議での議論を重ねて取りまとめを進める方針ですが、具体的な戦略の公表時期や法制化のスケジュールについては現時点で示されていません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)