中国産二酸化チタン、輸入2倍超との申請 日本が反ダンピング調査、国内素材産業への影響検証

2026年10月16日 13:10

日中貿易イメージ

中国と日本の貿易関係を背景に、工業用塗料の容器や塗装サンプルを配したイメージ。日本政府は中国産二酸化チタン顔料について、不当廉売関税の課税に向けた調査を開始した。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

財務省と経済産業省は2026年10月16日、中国産の「二酸化チタンルチル型をもととした顔料及び調製品」に対し、不当廉売関税(反ダンピング関税)の課税の要否を判断する調査を開始したと発表しました。日本酸化チタン工業会からの申請に基づくもので、業界側の提出資料によると中国産品の輸入量は2023年度から2025年度の間に2倍以上に増加し、不当廉売差額率は50〜60%に上ると主張されています。対象素材は自動車・建築用塗料や印刷インキなど幅広い産業で使われており、政府は不当廉売や国内損害の有無、中国企業の価格形成プロセスについて検証を進めます。

本文
 財務省と経済産業省は10月16日、中国産の「二酸化チタンルチル型をもととした顔料及び調製品」について、不当廉売関税の課税の要否を判断するための合同調査を開始しました。日本酸化チタン工業会が2026年8月7日に財務大臣へ課税を申請したことを受け、両省が関係法令に基づき検討した結果、調査を行う必要があると判断しました。なお、今回の対象区域としての中国には香港地域およびマカオ地域を含みません。

 調査対象となる二酸化チタン顔料(HS品目表3206.11号に分類されるもの)は、高い隠蔽力と優れた耐候性を備えた微細な白色粉末です。対象は、乾燥状態で二酸化チタン含有量が80%以上、結晶構造がルチル型、粒子径が100ナノメートルを超える顔料・調製品です。自動車用塗料や高級建築用塗料、グラビア・フレキソ印刷インキ、樹脂着色用のマスターバッチなどに広く使用されています。単なる特殊化学品にとどまらず、製造業や建設、包装材料など国内の広範なサプライチェーンを支える基礎素材の一つです。

 今回の調査は、国内メーカーの業界団体による申請を契機としています。日本酸化チタン工業会の申請書によると、中国産の対象製品の輸入量は2023年度から2025年度までの3年間で2倍以上に著しく増加し、国内需要量に占める中国産品の割合も上昇したとしています。

 さらに申請者側は、中国産品の国内販売価格が2023年度以降、国内メーカーの販売価格を著しく下回っていたと指摘しています。これにより、国内産業は中国産品を引き合いに出した値下げ要求を受けたり、製造コストの上昇に応じた値上げを断念せざるを得なくなったりし、売上高営業利益率が低水準にとどまるなど実質的な損害が生じていると主張しています。

 申請書では、正常価格と日本向け輸出価格の差額を輸出価格で割った「不当廉売差額率」を50%から60%の間と試算しています。これは申請者側が算出した数値であり、政府が決定した関税率ではありません。申請者は中国の国内価格をそのまま用いるのではなく、中国と比較可能な最も近い経済発展段階にある第三国の国内販売価格を正常価格として採用し、日本の輸入通関価格から海上輸送費等を控除して求めた輸出価格と比較したとしています。

 申請団体である日本酸化チタン工業会には国内製造3社が加盟しており、2025年度の対象同種製品の国内総生産高に占める加盟3社の生産高の割合は99.9%です。今回の申請は、国内生産高のほぼ全体を占める企業が加盟する業界団体から提出されたものです。

 今回の調査において政府は、単に輸入数量や価格差を追うだけでなく、中国企業側の価格・費用形成プロセスも詳細に調べる方針です。告示資料によると、中国の生産者において価格や費用、投資に関する決定が市場原理に基づいているか、政府による重大な介入がないか、原材料費や賃金が市場価格・自由な労使交渉を反映しているかなど、市場経済の条件が浸透しているかを検証します。

 調査期間は原則として1年以内(最大18カ月以内)と定められています。政府は今後、利害関係者からの証拠提出や書面回答の受付、現地調査を含む国内外企業への実態調査を進めます。調査の途中で不当廉売と損害の事実が推定され、産業保護が必要と認められた場合には暫定措置(担保提供や暫定関税)が執られる可能性もありますが、現段階で発動が決まっているわけではありません。また、調査結果によっては不当廉売関税を課さない判断もあり得ます。

 安価な輸入素材の存在は川下産業にとって調達コストを抑える要素になり得る一方、不当廉売による国内メーカーの収益悪化が続けば、国内における安定的な素材供給体制の維持が困難になる可能性もあります。今回の調査は、国際的な通商ルールに基づき、不当な低価格販売の有無と国内損害を客観的に検証し、素材産業の健全な競争環境をどう保つかを判断する手続きとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)