韓国・中国産めっき鋼板に最大55.3%の暫定AD関税 日本政府が国内鉄鋼産業保護へ

2026年08月04日 19:27

今回のニュースのポイント

政府は4日、韓国および中国(香港・マカオを除く)産の溶融亜鉛めっき鋼帯・鋼板について、不当廉売(ダンピング)の事実と国内産業への実質的な損害が推定されたとして、8月8日から12月7日までの4か月間、29.2~55.3%の暫定的な不当廉売関税(AD関税)を課すことを閣議決定しました。国内鉄鋼メーカーの価格競争環境が改善する一方、建材や家電など需要産業における調達コストへの影響が注目されます。

本文
 政府は4日、大韓民国および中華人民共和国(香港・マカオを除く)を原産地とする溶融亜鉛めっき鋼帯および鋼板に対し、暫定的な不当廉売関税(アンチダンピング関税)を課する政令を閣議決定しました。両国からの不当廉売(ダンピング)輸入の事実と、それによる国内産業への実質的な損害等の事実が調査で推定され、本邦産業を保護する必要があると認められたためです。本政令は8月7日に公布され、翌8月8日から12月7日までの4か月間、29.2%から55.3%の追加関税が適用されることとなります。

 アンチダンピング(AD)関税とは、海外の輸出企業が自国内の正常な価格よりも著しく低い価格で輸出し、輸入国の国内産業に打撃を与えている場合に、その不当な価格差を解消するために追加関税を上乗せする貿易救済措置です。WTOルールに基づく代表的な貿易救済措置の一つであり、今回の対象となった「溶融亜鉛めっき鋼帯・鋼板」は、表面に溶融亜鉛めっきを施して防錆機能を高めた鋼材で、ガードレールやフェンス、住宅用部材などの建築資材から、冷蔵庫をはじめとする家電製品の部品原料まで幅広く使用されている基幹素材です。

 今回の措置は、海外からの低価格輸入との競争が続いてきた国内鉄鋼メーカーにとって環境改善の機会となります。財務省と経済産業省が2025年8月から進めてきた両省合同の調査や関税・外国為替等審議会の答申を経て不当廉売の事実などが推定されたことで、不当な低価格輸入の抑制につながる可能性があり、国内メーカーの価格競争環境の改善が期待されます。

 一方で、この鋼材を原料として使用する需要産業にとっては、原材料価格の上昇につながる側面も持ち合わせています。安価な外国産鋼材への追加課税に伴い、建材メーカーや家電メーカー、金属加工メーカーなどでは調達コストが増加する可能性があり、これが国内の鋼材市況全体の上昇や最終製品の価格にどのように影響するかが今後の焦点となります。

 なお、今回決定されたのはあくまで調査途上における「暫定措置」です。政府は引き続き最終決定に向けた詳細な調査を継続し、暫定適用期間の終了までに正式なAD関税(本課税)へ移行するかどうかや、適正な税率の設定について最終的な判断を行うことになります。

 今回の決定は、日本政府がWTOルールなどに基づき貿易救済措置を発動した施策です。国内鉄鋼メーカーの価格競争環境の改善につながる可能性がある一方、需要産業のコスト面での影響も懸念されており、今後は本課税に向けた調査の行方に加え、国内の鋼材市況への影響が注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)