カスハラ対策、企業活動を守る制度へ 三重県が罰則付き条例、2027年4月施行

2026年10月17日 05:53

三重県イメージ

三重県議会は、従業員の就業環境と企業の安定した事業活動を守るため、知事の禁止命令と罰則を設けたカスタマーハラスメント防止条例を可決した。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

三重県議会は2026年10月16日の本会議で、カスタマーハラスメント(カスハラ)の防止に関する新条例を全会一致で可決・成立させました。三重県によると、悪質なカスハラに対する知事の禁止命令と罰則を設けた防止条例の成立は全国初で、2027年4月1日に施行されます。2026年10月1日に国の法律に基づき企業へカスハラ防止措置が義務付けられたのに続き、三重県は行政による禁止命令と命令違反者への50万円以下の罰金等という手続を法制化しました。条例は従業員保護にとどまらず、事業者の安定した事業活動や地域経済の発展も目的に掲げています。

本文
 三重県議会は10月16日、全会一致で「三重県カスタマーハラスメント防止条例」を可決・成立させました。三重県によると、悪質なカスハラ行為に対して行政上の禁止命令や刑事罰の手続きを盛り込んだ防止条例の可決は全国初となります。条例は2027年4月1日に施行されます。

 条例はカスハラを、顧客等による就業者への行為のうち、申出の内容や行為の手段・態様が社会通念上相当な範囲を超える著しい迷惑行為で、就業環境を害するものと定義しています。その上で第4条で「何人も、カスタマーハラスメントを行ってはならない」と規定し、社会的迷惑行為の防止を定めています。ただし、一般的なカスハラ行為に対して直ちに刑事罰が科されるわけではありません。処罰対象となるのは、事業者や行政による一定の段階的な手続きを経た上で発せられる「知事の禁止命令」に違反した場合に限られます。

 罰則や禁止命令の対象となる「特定カスタマーハラスメント」には、正当な理由なく長時間または反復して金銭・物品の提供や謝罪・面会を要求する行為、拒否されたにもかかわらず業務上著しく対応困難な要求を続ける行為などが含まれます。また、正当な理由なく大声や虚偽の申し立てなどで就業者に著しい不安を抱かせながら、これらの要求を行う場合も対象です。卑わいな言動やつきまといについても、長時間・反復して行う場合や、就業者を著しく羞恥させたり不安を覚えさせたりする方法で行う場合などが規定されています。

 罰則の適用までには、複数の手続きが設けられています。事業者が就業者の安全確保や中止要求などの防止措置(第14条)を講じたにもかかわらず特定カスハラが継続する場合、事業者は知事に申し出を行うことができます。知事は、県が設置する審査会の意見をあらかじめ聴いた上で、対象者に対し当該事業者への特定カスハラを行わないよう命令(効力1年以内)を発出できます。第21条は、この知事による禁止命令に違反した者に対し「50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」を科すと定めています。

 一方で条例は、事業者側に対しても主体的・積極的な対策を求めています。事業者はカスハラ防止に関する基本方針の策定・公表、必要な体制整備、対応手引の作成などの措置を講ずる努力義務(第14条第1項)を負います。また、自社の就業者が取引先や受託事業者などに対してカスハラを行わないよう必要な措置を講ずる努力義務(第8条第2項)も明記されており、企業には被害防止と加害防止の双方の体制整備が求められます。

 国の制度との関係では、労働施策総合推進法等の改正に基づき、2026年10月1日から企業に対してカスハラ防止措置が義務付けられたばかりです。国が企業側の社内対応や就業者保護の義務化を進めるのに対し、三重県はさらに一歩踏み込み、悪質な行為者に対する行政上の「禁止命令」と命令違反に対する「刑事罰」というルールを設けた形となります。

 今回の条例の特徴は、カスハラ被害を個人の接客トラブルとして捉えるのではなく、企業経営や地域経済の課題として位置づけた点にあります。条例第1条(目的)には、就業者の尊厳保持や安全確保に加え、「事業者の事業活動の自由を害する著しい迷惑行為を禁止する」「事業者の安定した事業活動の促進」「地域経済の健全な発展」が明記されました。カスハラによる就業環境の悪化や事業活動への支障を防ぐことが、企業の安定的な経済活動と地域経済の維持に不可欠であるという認識が示されています。

 なお、不当な不利益が生じないよう顧客側の権利への配慮も組み込まれています。第5条(適用上の注意)では、「顧客等からの要望の申出や権利行使等が不当に妨げられることのないよう十分に留意しなければならない」と規定されています。商品やサービスに対する正当な苦情、改善要求、適切な権利行使と、社会通念を超えた不当要求やハラスメント行為とを切り分け、前者が制限されることのないよう配慮がなされています。

 2027年4月の施行に向け、どのような事案が「特定カスタマーハラスメント」に該当するかという運用の明確化や、審査会での調査・審議の運用や判断の透明性、企業の社内体制整備が今後の焦点となります。国の防止措置義務化と併せ、行政による禁止命令を設けた三重県の制度が、今後の他自治体や企業実務にどのような影響を与えるかが注目されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)