フリーランス法、指導1542件 報酬支払いと契約明示に課題

2026年10月12日 17:06

画・会社員の副業 企業の4分の3で認められず

ノートパソコンで作業する人。公正取引委員会が公表した2025年度のフリーランス法運用実績では、報酬支払いや取引条件の明示に関する指導が多くを占めた。(写真はイメージ)

今回のニュースのポイント

2024年11月のフリーランス・事業者間取引適正化等法施行から約2年を前に、2025年度の通年度運用実績が検証されています。公正取引委員会が公表した集計によると、行政措置は1552件に上り、うち指導が1542件、勧告が10件でした。勧告や指導の対象となった行為の類型別集計では、報酬支払義務違反と取引条件明示義務違反が約82.9%を占めています。海外のプラットフォーム就労に関する動向とは適用対象が異なり、国内制度の定着には継続的な検証が求められます。

本文
 フリーランス・事業者間取引適正化等法が2024年11月1日に施行されてから約2年が経過しようとしています。公正取引委員会は2026年6月10日、同法第2章に基づく2025年度(令和7年度)の運用状況を発表しました。施行後初となる通年度の運用実績から、フリーランス取引の適正化に向けた課題と行政対応の実態が浮かび上がっています。

 2025年度の公取委による運用実績では、フリーランスからの違反被疑行為の申出が604件寄せられたほか、新規着手1626件、処理1597件、措置1552件となりました。措置の内訳は、法律に基づく勧告が10件、改善を求める指導が1542件でした。申出件数と措置件数は個別の手続区分に基づく指標であり、行政による実態調査や情報収集等を経た指導・勧告も含まれているため、申出のみを起点として直接対応が完了した数値とは区別して把握する必要があります。

 公取委による勧告や指導の対象となった行為を類型別に集計すると、延べ2727件に達します。このうち、発注時に書面等で条件を示さない取引条件明示義務違反が1126件、期日までの支払いを怠る報酬支払義務違反が1135件となり、この2類型だけで延べ件数の約82.9%を占めました。また、買いたたきも250件確認されています。なお、1つの発注事業者が複数の不適切行為を行っている重複事例が含まれるため、行為の類型別延べ件数は事業者単位の措置件数(1552件)とは一致しません。

 業種別の措置件数を見ると、IT関連やエンターテインメント分野を含む情報通信業が575件と最も多く、学術研究・専門技術サービス業の326件、運輸業・郵便業の135件がこれに続いています。公取委はこれに先立ち、2025年12月10日公表の集中調査において、放送・広告業の128事業者に対して2025年10月までに指導を行った実績も明示していました。ただし、集中調査による指導件数は年度全体の集計数へ単純加算するものではなく、業界固有の課題に対する段階的な指導の一環として位置づけられます。

 フリーランス法は、公取委および中小企業庁が主に第2章の取引適正化(報酬支払いや契約明示など)を担い、厚生労働省および都道府県労働局が第3章の就業環境整備(ハラスメント対策や募集情報の正確表示、育児介護配慮、契約の中途解除など)を所管する役割分担となっています。公取委の相談窓口には年間4351件の相談が寄せられ、不利益の原状回復総額は1734万円に上りました。なお、厚労省事業として設置されている「フリーランス・トラブル110番」への相談件数(1万3400件)は別窓口の実績であり、所管業務に応じた相談対応が行われています。

 フリーランスやギグワーカーをめぐる議論は国際的にも進んでいます。EUでは2024年に成立したプラットフォーム労働指令(Directive 2024/2831)により、デジタルプラットフォーム就労における雇用上の地位の推定やアルゴリズム管理の透明化が進められていますが、現在は加盟国内での法制化段階にあります。また、国際労働機関(ILO)が2021年に公表した世界雇用社会情勢報告(WESO)もプラットフォーム企業の役割分析を中心としており、雇用類似の働き手全般を包括的に規律する日本のフリーランス法とは適用対象やアプローチが異なります。

 2025年度の運用実績では、行政による指導が多数行われ、報酬支払いや条件明示といった基本的な取引ルールの徹底に課題があることが浮かび上がりました。行政措置の件数のみで制度の成否や違反率を単純に判断することはできませんが、現場の取引慣行の実質的な改善を確かめるためには、今後も通年データの蓄積と継続的な検証を重ねていくことが不可欠です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)