仏独、EU自動車政策で共同方針 CO₂規制の柔軟化と域内生産を重視

2026年10月18日 08:32

画・EV業界。コロナ危機後の排出ガス規制変革に適合できる企業が市場を牽引。

電気自動車(EV)の充電風景。フランスとドイツは、CO₂排出削減目標を維持しながら、規制の柔軟性と欧州域内での次世代EVの開発・製造、投資の強化を重視する共同方針を発表した。(写真は資料画像)

今回のニュースのポイント

フランスとドイツの両政府は2026年10月16日、欧州自動車産業の将来に関する共同声明を発表しました。気候変動目標の維持を前提にしつつ、市場や技術条件に応じたCO₂排出規制の柔軟性確保と、次世代電気自動車(EV)などの欧州域内における開発・製造能力や供給網の強化を一体的に推進する方針を提示しました。EU内で規制見直しの交渉が進むなか、脱炭素への移行と欧州の生産・雇用基盤の維持を両立させる共通姿勢を示しています。

本文
 フランスとドイツの両政府は10月16日、欧州自動車産業の持続可能な成長と競争力確保に向けた共同声明を発表しました。声明では、EUの気候変動目標およびCO₂排出削減目標の維持を明記する一方で、市場環境や技術的条件の違いを踏まえた規制運用の柔軟性や、欧州域内での投資・研究開発・供給網の強化を求める方針を提示しました。

 共同声明は、脱炭素化を進める過程において、次世代EVなどの開発・製造能力を欧州域内に確保する重要性を強調しています。具体的には、欧州域内での投資、技術革新、生産を重視する「欧州優先(European preference)」の考え方を盛り込み、強靱なサプライチェーンの構築を掲げました。ただし、具体的な域内調達比率の数値目標や外国企業の排除措置などを決定したものではありません。

 EUの現行法では、新車の乗用車・小型商用車について、メーカー別の平均CO₂排出量を2035年から2021年比で100%削減する目標が定められています。この法制化自体は2023年に完了している既存の枠組みですが、EV市場の減速やコスト増加、世界的な競争激化を受け、規制の実施方法や緩和策をめぐる議論が続いています。

 こうしたなか、欧州委員会は2025年12月、産業競争力の維持を主眼とした自動車政策パッケージの改正案を提案しました。この提案には、2035年の新車CO₂削減目標を90%に見直し、残る排出分についてEU域内製の低炭素鋼や一定の持続可能燃料を用いた補完措置を認める案などが含まれています。今回の仏独の表明は、改正案を交渉するうえでの両国の共通の指針として位置付けられます。

 今回の仏独共同声明は、継続的な政策協議の延長線上にあります。2026年7月17日に開催された第26回仏独閣僚評議会において、両国はすでに自動車政策における競争力強化、技術中立性、規制の柔軟性、域内生産の重要性について共同方針をまとめる意向を示していました。今回の発表は、その政治姿勢をより明確な文書として正式に公表したものです。

 EU内では現在、制度改定に向けた審議が進められています。2026年10月15~16日の欧州理事会(EU首脳会議)では、自動車政策パッケージについて、欧州議会とEU理事会による交渉を年内に終えるよう求めました。もっとも、仏独による方針発表や欧州理事会の要請は政治的な方向性の提示であり、欧州議会やEU理事会における実際の法改正手続きの完了を意味するものではありません。

 今回の動向は、単なる排出規制の緩和論ではなく、産業政策と環境規制を一体として捉える欧州の姿勢を映しています。排出規制の設計は、自動車メーカーの設備投資や技術選択、電池・部材の供給網、域内雇用にも影響するためです。欧州市場で事業を展開する日本企業にとっても、将来的な規制の柔軟化の度合いと域内生産を重視する政策動向は、今後の生産・投資計画を検討するうえでの重要な注視材料となります。

 仏独が共同方針を示したことで、今後はEUの正式な立法手続きにおいて、CO₂規制の柔軟性と欧州域内の生産・投資を重視する考え方が、どのような制度に反映されるかが焦点となります。欧州理事会が求める年内の交渉妥結に向け、欧州議会とEU理事会の調整がどこまで進むかが注目されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)