地方銀行が中小企業の経理を受託 人手不足対策と非金利収益の拡大へ

2026年10月22日 07:03

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中小企業の経理・バックオフィス業務をイメージした写真。地方銀行では、地域企業の人手不足やDXを支援する経理業務受託が、新たな非金利収益の機会として期待されている。(資料画像)

今回のニュースのポイント

地方銀行が中小企業の経理やバックオフィス業務の受託に取り組み始めています。金融庁は2026年4月施行の改正監督指針で、経理業務の受託をデジタル化支援業務として明確化しました。日本銀行や地域銀行グループが参加した10月14日のワークショップでは、人手不足緩和や銀行側の非金利収益獲得といった期待の一方で、顧客の財務情報の適切な管理や利益相反防止などの課題も示されました。

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 地方銀行をはじめとする地域金融機関が、取引先である中小企業の経理やバックオフィス業務を直接受託し、経営課題の解決を支援する動きを強めています。2026年10月14日に開催された第5回「地域DX支援の取り組みに関するワークショップ」では、金融庁、日本銀行、地域銀行グループの関係者が登壇し、経理業務受託の制度的価値や先行事例、導入時のリスク管理について議論を交わしました。背景には、深刻化する中小企業の経理人材不足と、金利収入に頼らない銀行側の非金利収益の獲得という双方のニーズが存在します。

 制度面では、金融庁が2025年12月に公表した「地域金融力強化プラン」に基づき、金融機関による企業のDX支援方針を打ち出しました。これを受けて2026年4月1日に施行された「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正において、金融機関が提案するソリューション(デジタル化支援業務)の一例として、情報提供やITツール導入支援と並び「経理業務の受託」が明確に位置付けられました。これは監督上の着眼点を整理したものであり、地域金融機関が経営支援の一環として経理BPO(業務委託)へ参入しやすくなる環境が整えられました。

 中小企業側にとって、経理業務の外部委託は切実な課題への対応策となり得ます。地方の中小企業では、経理担当者の高齢化や退職に伴う後継者不足、特定の担当者に業務が依存する属人化が大きなリスクとなっています。記帳代行、請求書発行、支払処理、月次決算などの定型業務を銀行側やその関連会社へ外注することで、自社の限られた人員を商品開発や営業といった本業・コア業務へ集中させることが可能になります。さらに、クラウドサービスやAI(人工知能)を活用したデジタルBPOを取り入れることで、業務の標準化や処理の迅速化という副次的な効果も期待されています。

 一方、地方銀行側にとっても、経理業務の受託は融資業務に加えてサービス領域を広げる契機となります。融資利息に加えて新たな手数料収入を獲得し、収益源を多様化する機会として期待されています。また、日常的なバックオフィス業務を引き受けることで顧客企業との関係性が一段と深まり、預金取引の拡大や新たな経営課題の早期把握にもつながります。日本銀行の資料では、将来的な可能性として、財務データ取得のデジタル化を通じた与信管理の効率化や融資判断の精度向上といった展望も整理されています。

 地域銀行グループによる具体的な取り組みも本格化しています。七十七銀行が100%出資し、2024年10月に開業した「七十七ビジネスウィズ」は、資料・契約書の電子データ化、データ入力、発送業務などの事務・計算受託や、BPOに関するコンサルティングを手掛けています。同行グループでは、人手不足に悩む地域企業の業務継承やシニア・障がい者雇用と連携させた事務受託の仕組みを構築し、バックオフィスから企業経営を支えるアプローチを実践しています。

 ちゅうぎんフィナンシャルグループは、2024年5月に策定した「ちゅうぎんDX戦略」の中で、地域BPOサービスを新たな事業領域として位置付けています。自社グループでの業務効率化や検証を踏まえ、地域企業の決算・経費・労務などの間接業務を支援し、本業に集中できる環境づくりを進める方針です。また、域外企業からの業務受託による地域雇用の創出も目指しています。

 拡大が見込まれる一方で、金融機関特有の情報管理や利益相反に対する厳格なリスク管理が強く求められます。日本銀行の資料では、経理業務を通じて得た顧客企業の機微な財務情報を、顧客の事前承諾なしに融資審査へ不適切に転用するリスクや、情報漏えい時の信頼失墜について注意喚起がなされています。また、委託業務のブラックボックス化や業務品質の管理、税理士の独占業務との切り分けや連携も重要な検討課題となります。

 地域金融機関の役割は、従来の「資金供給」を中心とした支援から、中小企業の「日常業務や経営基盤そのものを支える」領域へと広がりを見せています。経理業務受託は、中小企業の人手不足緩和と銀行側の収益機会拡大という双方の課題を解決する可能性を秘めているものの、事業として定着させるには業務品質の確保、受託コストの適正化、厳格なガバナンス体制の構築が不可欠です。地域経済の発展に向け、持続可能なBPO事業モデルを確立できるかが今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)