越境EC拡大で税関の水際取締りに課題 輸入許可件数、2019年比4.1倍の約1.9億件

2026年10月23日 08:08

物流倉庫のコンベヤーイメージ

越境ECの拡大に伴い、増加する小口輸入貨物。財務省関税局は、輸入申告情報の不足や水際取締りの課題を指摘し、販売・輸送・通関の情報連携強化を重要視している。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

財務省関税局は2026年10月23日の取引デジタルプラットフォーム官民協議会で、越境EC拡大に伴う水際取締りの課題を示しました。2024年の日本の輸入許可件数は約1.9億件と2019年比で約4.1倍に急増。中国や韓国関連のECサイトを通じた少額BtoC貨物の増加が背景にあります。個人輸入者からの申告情報不足により知財侵害品などのリスク判定が困難になる懸念があり、海外事業者や通販プラットフォームとの情報連携強化が求められています。

本文
 財務省関税局は2026年10月23日、第9回「取引デジタルプラットフォーム官民協議会」において、近年急拡大する越境EC(電子商取引)に伴う通販貨物の水際取締りに関する現状と課題を整理した資料を提示しました。背景には、海外通販サイトを利用して消費者が直接商品を購入する取引の急増があります。財務省のデータによると、2024年の日本全体の輸入許可件数は約1億9,000万件に達し、コロナ前の2019年(約4,600万件)と比較して約4.1倍に膨らみました。特に中国や韓国関連のECサイトを利用した主に課税価格1万円以下のBtoC(企業対消費者)貨物の増加が、輸入件数急増の大きな要因となっています。

 税関には「適正かつ公平な関税等の徴収」「安全・安心な社会の実現」「貿易の円滑化」という3つの重要な社会的使命があります。水際において不正薬物や銃器、偽ブランド品などの知的財産侵害物品の流入を防ぐため、輸入申告の内容を審査し、必要に応じて貨物を検査することで、不正貨物の流入を防ぐ役割を担っています。しかし、消費者の生活に越境ECが深く浸透し、小口のBtoC貨物が大量かつ多様に流入する現状において、水際での円滑な通関手続きを維持しながら、危険性のある不正貨物をいかに制度上見極めるかが大きな課題となっています。

 最大の懸念事項として指摘されているのが、BtoC貨物における「輸入申告情報の不足」です。従来のBtoB(企業間)取引とは異なり、個人輸入者から通関に必要な正確な申告情報を直接入手することは極めて困難です。このため、通関業者は海外の運送業者などを経由して情報を収集せざるを得ません。商品の販売情報、運送情報、輸入申告情報が十分につながっていない場合、税関が正確なリスク判定を行えず、知的財産侵害物品や危険物などの摘発を十分に行えないおそれが生じます。販売者から海外運送業者、通関業者、税関へと流れる情報の精度をいかに保つかが焦点です。

 この課題に対し、財務省関税局の「急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ」が2025年11月26日に取りまとめた「中間とりまとめ」では、将来的な対応の方向性が提示されています。具体的には、税関や大手プラットフォーム(PF)事業者から海外販売者に対し正確な貨物情報を提供する重要性を多言語で周知することや、国内外のPF事業者との連携枠組み(MOUなど)を拡大することが挙げられています。さらに、違法貨物に関する情報共有や、PF事業者が保持する個別販売情報の入手・活用、さらには官民のシステム連携の仕組みなどについて検討を進める方針が示されています。

 水際での安全対策に加え、国際的な課税制度上の不均衡も課題として浮上しています。海外から消費者への直送貨物が急増することで、国内の販売業者や輸入事業者との間で競争条件上の不均衡が生じる懸念が提示されています。また、輸入貨物ごとのEPA(経済連携協定)税率の確認などにより、納税事務が複雑化する問題も指摘されています。財務省資料は、制度の見直しが通関実務に及ぼす相互の影響を考慮し、個別制度だけでなく全体像を見渡して対応する必要性を示しています。

 越境ECの急拡大は、税関の取締り手法そのものを従来の「国境での現物検査中心」から「販売から輸送・通関に至る取引情報をいかにデジタルで連携・活用するか」という新たなステージへ転換させる契機となっています。商品を扱う販売者、注文を受けるプラットフォーム、輸送を担う運送業者、輸入申告を行う通関業者がそれぞれ分散して持つ情報を必要な範囲で安全につなぐ仕組みの構築は、模倣品や有害物質の流入防止だけでなく、適正な関税の徴収と迅速な通関という双方の利便性を高めるうえで不可欠な取り組みとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)