RapidusとHCLTech、インドに半導体開発拠点2カ所開設 マスク設計やPDK開発で連携

2026年10月27日 08:23

半導体ウェハ設計イメージ

半導体ウェハーと設計・開発作業をイメージした画像。RapidusとHCLTechは、インドのベンガルールとフブリに半導体開発支援拠点2カ所を正式開設した。(資料画像)

今回のニュースのポイント

RapidusとインドのIT大手HCLTechは2026年10月26日、次世代半導体技術の開発協力を発表しました。インドのベンガルールとフブリに半導体開発支援拠点2カ所を正式開設し、マスク設計や設計インフラ、プロセス設計キット(PDK)の開発で連携します。さらに設計技術協調最適化(DTCO)やレイアウト設計に取り組み、インドの技術者育成も進めます。新拠点は設計・開発を支える施設であり、製造工場ではありません。投資額や採用人数は非公表です。

本文
 次世代半導体の国産化を目指すRapidus(ラピダス)と、インドのグローバルITサービス大手HCLTech(HCLテクノロジーズ)は10月26日、次世代半導体技術の開発に向けたパートナーシップを締結したと発表しました。両社は、インドのベンガルール(Bengaluru)とフブリ(Hubli)に、Rapidusの半導体開発を支援するHCLTechの開発センター2カ所を正式に開設したと発表しました。今回開設された拠点は、ウェハー処理やチップ製造を行う生産工場ではなく、先端半導体の設計や開発プロセスを技術面から支援する専門拠点として位置づけられています。

 新拠点において両社が重点的に取り組む領域の一つが、半導体マスク設計と設計インフラの整備です。マスク設計とは、設計された微細な電子回路パターンを製造用のフォトマスクデータへと変換・最適化する重要な工程を指します。先端半導体の製造においては、設計データを実際の製造ラインで忠実に再現するための高精度な設計処理基盤が不可欠となります。両社はインドの拠点を活用し、設計データの処理やインフラ環境の構築を技術的に支援する体制を整えます。なお、今回の協力は設計業務の支援であり、マスク自体の製造設備を新設するものではありません。

 さらに両社は、プロセス設計キット(PDK)の開発や、設計技術協調最適化(DTCO)の推進でも協力します。PDKは、製造工場のプロセス技術に適合した回路設計を行うために必要な設計ルールや素子モデルをまとめたソフトウェア群であり、半導体設計者にとって不可欠なツールです。またDTCOは、回路設計と製造プロセスの両面を初期段階からすり合わせ、性能や面積の最適化を図る手法です。両社はPDKの開発やDTCO、レイアウト設計を推進しますが、現時点で特定の歩留まり向上率や製造コストの削減幅が実証・確定しているわけではありません。

 今回の連携には、高度な技術を備えた半導体人材の育成と確保という側面も含まれています。両社はインド国内において先端半導体分野に携わる技術者の育成を進め、日本のRapidusが求める設計・開発需要や高度な技術サポートに対応する方針を掲げています。最先端プロセスの立ち上げには、製造設備の導入だけでなく、設計ツールやプロセス開発に精通したエンジニアの存在が欠かせません。ただし、日本への具体的な派遣人数や現地での採用規模などは今回の発表では明らかにされていません。

 先端半導体の産業基盤を確立するうえでは、国内における前工程・後工程の製造体制整備と並行して、設計・開発を円滑に進めるためのエコシステム構築が極めて重要です。今回の動きは、日本の半導体開発事業に対し、豊富なIT・エンジニアリング人材を抱えるインドの拠点が設計支援を提供する国際的な分業関係の一例といえます。もっとも、設計拠点の開設が直ちに量産スケジュールの前倒しや製品競争力の大幅な向上を約束するものではなく、実務的な開発連携の進展が今後の評価材料となります。

 今回の発表では、ベンガルールとフブリにおける2拠点の正式開設と主要な協力分野が示された一方、新拠点への投資額や従業員数、具体的な契約金額などは公表されていません。また、今回の発表では、Rapidusの半導体量産スケジュールに関する新たな変更や具体的な影響は示されていません。今後は、開設された両拠点でマスク設計やPDK開発の作業が計画通り進捗し、次世代半導体の実用化に向けた開発基盤として実効性を持つかが焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)