キヤノン、通期営業利益予想を90億円下方修正 医療機器の生産遅延拡大、7~9月期は10.3%増益

2026年10月27日 15:56

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キヤノンのロゴ。同社は2026年10月27日、医療機器の生産遅延による影響拡大を受け、2026年12月期の通期営業利益予想を従来の4,650億円から4,560億円へ90億円下方修正した。(資料写真)

今回のニュースのポイント

キヤノンは2026年10月27日、2026年12月期の通期営業利益予想を4,650億円から4,560億円へ90億円下方修正しました。メディカル事業の生産遅延による売上影響見込みが約450億円から約900億円へ拡大し、生産正常化の見通しも2027年以降へ後退しました。一方、7~9月期の売上高は前年同期比4.9%増の1兆1,588億円となり、会社によると過去最高でした。営業利益も10.3%増加しています。通期予想は引き下げたものの、前期比では増収増益を見込んでいます。

本文
 キヤノン株式会社は10月27日、2026年12月期の通期連結業績予想(米国会計基準)を下方修正し、営業利益の予想を従来の4,650億円から4,560億円へ90億円引き下げると発表しました。売上高の予想も従来の4兆8,000億円から4兆7,660億円へ340億円引き下げています。直近の7~9月期単独では増収増益を確保したものの、医療機器を取り扱うメディカル事業における生産遅延の長期化と影響額の拡大が、通期の連結業績見通しを押し下げる要因となりました。

 下方修正の主因となったメディカル事業では、生産の遅れが想定以上に拡大しています。同社によると、生産遅延に伴う通期の売上高への影響見込み額は、前回の約450億円から約900億円へと拡大しました。これに伴い、従来は2026年9月としていた生産正常化の見通しは2027年以降へと後退しました。会社側は遅延の要因として、社内システム更新に伴う運用混乱や調達先工場での火災に加え、急速に拡大する人工知能(AI)関連需要を背景とした基板および電子部品の需給逼迫を挙げています。なお、約900億円は売上高への影響見込みであり、利益の損失額ではありません。

 一方、足元の事業活動を反映する2026年7~9月期単独の業績は堅調に推移しました。同四半期の売上高は前年同期比4.9%増の1兆1,588億円となり、同社によると四半期ベースの売上高として過去最高を記録しました。営業利益は同10.3%増の971億円、税引前利益は同15.8%増の1,064億円、当社株主に帰属する四半期純利益は同18.2%増の752億円となりました。同社は、主力のプリンティング機器の業績改善とネットワークカメラの力強い成長を、四半期業績の特徴として挙げています。

 2026年1~9月期の累計連結業績においても増収増益基調を維持しています。売上高は前年同期比4.0%増の3兆4,333億円、営業利益は同8.4%増の3,276億円を計上しました。税引前四半期純利益は同14.1%増の3,584億円、当社株主に帰属する四半期純利益は同12.2%増の2,464億円でした。原材料価格の上昇や一部地域での需要減退といった逆風を構造改革効果や円安などで補い、第3四半期累計期間としては前年実績を上回る利益水準を確保して推移しています。

 ただし、事業セグメント別の1~9月期実績をみると業績の明暗が明確に分かれています。ネットワークカメラなどが伸長したイメージング事業は営業利益が前年同期比33.2%増の1,443億円と大きく伸び、プリンティング事業も同3.0%増の2,081億円と増益を確保しました。これに対し、生産混乱が生じているメディカル事業の営業利益は同40.6%減の107億円と大幅な減益に沈みました。半導体露光装置などを扱うインダストリアル事業も同24.8%減の301億円にとどまり、事業分野ごとに収益環境の格差が広がっています。

 通期の見通しを最終利益段階でみると、当社株主に帰属する当期純利益予想は従来の3,400億円から3,330億円へ70億円引き下げられました。もっとも、従来予想からの下方修正ではあるものの、修正後の数値は前期実績と比較して売上高が3.1%増、営業利益が0.1%増、純利益が0.3%増となっており、前期比での増収増益の達成方針は維持しています。また、年間配当予想についても中間配当80円と期末配当予想80円を合わせた1株当たり160円を据え置き、前期と同額の配当水準を維持する計画です。

 今回のキヤノンの決算は、主力事業の需要回復や好調な四半期業績がある一方で、特定部門の部品調達難や生産制約が全社の事業計画を圧迫する製造業の現実を示しました。とりわけ、自社の運用課題やサプライヤーの事故に加え、半導体・AIブームに伴う基板や電子部品の争奪戦が医療機器の組み立てラインに波及した点は象徴的です。生産遅延による売上高への影響見込みが拡大し、正常化の時期も2027年以降へ後退したことは、サプライチェーン上の制約が企業全体の業績見通しに及ぼす影響の大きさを示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)