日立、3万5,000人体制の「Hitachi Digital」を27年4月発足 AI開発から産業現場の運用まで統合

2026年10月28日 12:42

今回のニュースのポイント

日立製作所は10月28日、GlobalLogicとHitachi Digital Servicesを統合し、新会社「Hitachi Digital」を2027年4月1日に発足させると発表しました。新会社は27カ国に約3万5,000人の専門人材を擁し、880社以上の顧客にサービスを提供します。AIの開発から企業システムの刷新・運用までを一体化し、工場や鉄道、電力設備などへのフィジカルAI実装を進めます。国内では5,000人のFDEを育成・配置する計画です。

本文
 株式会社日立製作所は2026年10月28日、2026年1月に公表していた米国子会社の統合計画に基づき、グローバルロジック(GlobalLogic Inc.)と日立デジタルサービス(Hitachi Digital Services LLC)の事業を統合し、新会社「日立デジタル(Hitachi Digital Inc.)」を2027年4月1日付で発足させると発表しました。あわせて同日より、日立ブランドのもとでグローバルブランドキャンペーンを開始しました。新会社は世界27カ国に約3万5,000人の専門人材を擁し、880社以上の顧客企業に対してサービスを提供する体制となります。1月に発表した基本計画を受け、今回の発表では新会社の発足時期や事業規模、組織体制、およびAI実装に向けた具体的な事業戦略が公表されました。

 新会社は米国カリフォルニア州サンタクララに本社を置き、アナンド・ビルジェ(Anand Birje)氏がCEO兼会長に就任します。統合にあたり、GlobalLogicが強みとする製品・ソフトウェアエンジニアリングやデジタル製品開発の能力と、Hitachi Digital Servicesが培ってきたエンタープライズシステム構築や運用の知見を結集します。組織体制としては、現在のHitachi Digital LLCが「Hitachi Digital Holding LLC」へ社名を変更して事業ユニット全体の運営を統括し、顧客へ直接サービスを提供する事業会社としてHitachi Digital Inc.が運営を担います。戦略策定からAI開発、基幹システムの刷新、大規模システムの安定運用までを一貫して支援する体制を整えます。

 近年、企業がAI技術を事業変革へつなげる過程では、概念実証やモデル開発にとどまらず、既存基幹システムとの接続や業務プロセスへの定着、大規模環境での安定稼働が大きな課題となっています。日立は、クラウド、データ、AIが同時並行で融合する市場環境において、複数のITベンダーを個別に管理するのではなく包括的な支援を求める企業の需要に応える方針です。ソフトウェア開発からシステム運用までを一つの事業会社で一体化して担うことで、単なるツール導入にとどまらない成果連動型のビジネスモデルを展開し、企業のデジタル変革を具体的な事業成果へ導くことを目指しています。

 産業インフラ分野に強みを持つ日立ならではの差別化要因として位置付けられるのが、長年培ったOT(制御・運用技術)とAIを組み合わせた「フィジカルAI」の実装です。新会社は、企業の業務システムや事務プロセスを対象とするエンタープライズAIに加え、工場、鉄道、電力設備といった物理的な社会インフラや産業設備の現場にAIを組み込むフィジカルAIの実装を加速させます。自動車・モビリティ、エネルギー、金融、ヘルスケアなど幅広い産業を対象市場とし、蓄積した技術や運用知見を社会インフラ革新ソリューション群「HMAX by Hitachi」へ組み込むことで、独自知的財産による事業展開を強化する構想です。

 このAI実装を現場で主導する推進力として、日立は顧客の業務や設備環境へ深く入り込む専門人材「FDE(Forward Deployed Engineers)」の展開を打ち出しています。AIスペシャリストやデータサイエンティスト、エンジニアで構成されるFDEチームが、顧客やパートナー企業と連携して複雑な運用現場への技術適用を担います。日立グループ全体としてこの体制を加速するため、日本国内だけでも5,000人のFDEを育成・配置する計画を掲げています。これは専門人材の育成と配置に関する戦略的な計画であり、今回の発表に伴う新規採用数を指すものではありません。

 新会社は外部顧客へのサービス提供と並行して、日立グループを「カスタマーゼロ」と位置付け、日立エナジーや日立レールなどのグループ内事業にもAIを実装する方針です。FDEが変電所や鉄道、工場の最前線に入り込んで現場の運用ノウハウや熟練者の暗黙知を収集し、現場固有の制約条件を踏まえたAIデータ基盤を構築します。この実践を通じて得られた知見をソリューションへ還元する仕組みを整えており、公式発表によると、Hitachi Digitalとしての日立グループ内シナジー売上は上期に前年同期比46%増加したとしています。

 今回の事業再編は、日立のデジタル事業の中核である「Lumada 3.0」のグローバル展開を加速させ、中期経営計画「Inspire 2027」が掲げる調和のとれた社会(ハーモナイズドソサエティ)の実現に向けた成長戦略に位置付けられます。今後はFDEをはじめとする人材投資に加え、テクノロジー企業とのアライアンス拡大やM&Aを通じて事業規模を拡大する方針です。なお、新会社としての事業運営開始は2027年4月1日を予定しており、現時点で新会社の将来的な具体的な売上目標や、統合に伴う定量的な効果額は公表されていません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)