AI電力需要、変圧器の「材料」にも投資波及 カナダで4.79億加ドル計画

2026年10月17日 09:16

変圧器イメージ

大型電力用変圧器が並ぶ製造工場。カナダ政府は、日立エナジーによる高電圧変圧器向け絶縁材料の新工場計画に3,000万カナダドルを支援する。データセンター拡大などを背景に、電力設備の上流材料にも投資が広がる。(写真は資料画像)

今回のニュースのポイント

カナダ政府は10月16日、日立エナジー・カナダによる4億7,880万カナダドル規模の工場計画に3,000万カナダドルを支援すると発表した。オンタリオ州に国内初の電気用プレスボード製造施設を設け、高電圧変圧器向け絶縁材料を年間最大2万トン生産する計画。政府は電化や再エネ導入、データセンター拡大などを電力需要増の背景に挙げており、投資が変圧器の上流材料にも及んでいる。

本文
 カナダ政府イノベーション・科学経済開発省(ISED)は10月16日、日立エナジー・カナダが進める4億7,880万カナダドル規模の大型投資計画に対し、連邦政府資金から計3,000万カナダドルを支援すると発表しました。本プロジェクトにより、オンタリオ州ロンドンにカナダ初となる「電気用プレスボード(electrical-grade pressboard)」の製造施設が建設されます。送電網の近代化や電化、再生可能エネルギーの導入、データセンターの拡大を背景とした電力需要の増加が、変圧器向け絶縁材料の国内生産能力の整備にもつながっています。

 新工場で製造されるのは、高電圧変圧器に使用される電気用プレスボードおよび積層絶縁材料です。先端的な製造技術と自動化プロセスを導入し、年間最大2万トンの生産能力を備える計画です。高電圧変圧器向けの高付加価値な絶縁材料について、カナダ国内に新たな製造能力を構築するものです。

 カナダ政府が今回の大型支援に踏み切った背景には、急速な電力需要の増加があります。政府発表では、需要を押し上げる要因として、送電網の近代化、社会全体の電化、再生可能エネルギーの導入拡大と並び、「データセンターの拡大」を明記しています。発電設備だけでなく送電網の増強とそれを支える高電圧変圧器が必要とされるなか、こうした電力インフラの整備を支えるため、変圧器の製造に使う絶縁材料についても、生産能力の拡充が進められています。

 ロンドン新工場で生産された絶縁材料は、ケベック州ヴァレンヌにある日立エナジーの変圧器製造拠点へ供給されるほか、北米および世界市場の変圧器メーカーや絶縁材メーカーへも幅広く供給される予定です。単なるカナダ国内の自給目的ではなく、北米全体の電力インフラ供給網における戦略的な供給拠点として機能することが期待されています。

 本プロジェクトの総事業費4億7,880万カナダドルに対し、連邦政府は「戦略的対応基金(Strategic Response Fund)」から2,000万カナダドル、「森林産業変革投資(IFIT)プログラム」から1,000万カナダドルの計3,000万カナダドルを支援します。大型の民間投資と政府の産業支援策を組み合わせることで、エネルギー安保に直結する国内サプライチェーンの強化を図ります。

 今回の投資には、エネルギー政策にとどまらない産業政策上の狙いも込められています。原料にはカナダ産の木材繊維などを活用する計画であり、従来型の製品が主流だった国内の森林産業に対して、高電圧電力機器向けという高付加価値な新市場を開く狙いがあります。森林資源から木材繊維、電気用プレスボード、変圧器、そして送電網やデータセンターへとつながる、新たな産業連携の構図が形成されます。

 雇用面においても確かなインパクトが見込まれます。日立エナジーは現在、カナダ国内で約1,250人を雇用していますが、今回の一連の成長計画を通じて国内雇用を1,765人へと拡大する方針です。このうちロンドン新工場では、100人を超える新規雇用の創出が予定されています。

 今回のカナダでの大型投資は、データセンター拡大などを背景とする電力需要の増加に対応し、変圧器の製造に必要な絶縁材料についても生産能力の整備が進められている事例といえます。AIインフラ投資を考えるうえでは、半導体やサーバーだけでなく、電力設備とその製造に必要な材料の供給能力も重要な検討対象となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)