大型蓄電システムの組み立てをイメージした工場内の様子。米エネルギー省は2026年10月28日、電池の原材料調達から素材加工、製造までをつなぐ国内供給網の構築を目指す国家戦略を発表した。あわせて、研究成果の量産化を支援する新組織「BattMan」の立ち上げを明らかにした。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
米エネルギー省(DOE)は10月28日、電池分野の包括的な国家戦略を発表するとともに、製造技術の実用化を加速させる新組織「BattMan」を立ち上げました。戦略では2030年までに国内で一貫したバリューチェーンを構築し、2035年までに技術と製造で主導的地位を確立することを目指します。米国内の電池需要は輸送や蓄電向けに2025年の179GWhから2035年には約4倍の707GWhへ拡大する見込みで、研究から量産化までの供給網強化を急ぎます。
本文
米エネルギー省(DOE)の重要鉱物・エネルギーイノベーション局(CMEI)は2026年10月28日、電池産業における米国の競争力強化に向けた包括的な国家戦略「A National Strategy for American Leadership in Batteries」を発表しました。あわせて、研究室で開発された革新的な電池技術を商業生産へと円滑に移行させるための製造支援コンソーシアム「Battery Manufacturing Accelerator(略称:BattMan)」の立ち上げを明らかにしました。国家戦略では、2030年までに米国内で一貫した電池バリューチェーンを確立することを目指し、さらに2035年までに電池技術および製造分野で米国の主導的地位を築くことを目指す政策目標に掲げています。
米国が電池供給網の強化を急ぐ背景には、電動輸送機器の普及に加え、高度な計算技術やデータセンターの急増に伴う電力需要増や電力網の強靱化など、蓄電インフラに対する需要の急拡大があります。DOEが提示した見通しによると、米国内における輸送・エネルギー貯蔵用途の電池需要は、2025年の179ギガワット時(GWh)から、2035年には約4倍(約3.95倍)にあたる707GWhへと急増する見込みです。特にデータセンター向け蓄電設備などの需要増大に対応するため、安全かつ安定した電池供給体制の確保が不可欠な課題となっています。
今回の国家戦略が最も重視しているのは、これまで脆弱とされてきた製造の中間工程を含む国内供給網の統合です。米国では電池セルやパックの最終組み立てへの投資が進む一方、原材料の採掘から精製、正極材や負極材、電解液、セパレーターといった部素材加工など、上流から中流にかけての工程で外部依存が続いています。DOEはこうしたサプライチェーンの断絶を是正し、資源採掘から素材加工、電池セル・パックの製造までをつなぐ国内供給網を構築する方針を示しています。
この目標を達成するため、戦略では6つの重点分野が設定されました。具体的には、①上流・中流サプライチェーンへの重点投資、②研究成果の商業利用への移行加速、③製造プロセスの革新、④電力網近代化に向けた蓄電技術の導入、⑤国際パートナーとの戦略的な連携、⑥米国内の人材育成、が挙げられています。これらは単一の補助金制度にとどまらず、政策資源を優先配分する枠組みとして位置づけられています。
同時に始動した「BattMan」は、この戦略のうち量産技術の確立を担う実行体制となります。米パシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)が主導し、アルゴンヌ国立研究所やオークリッジ国立研究所などの国立研究機関、大学、産業界が連携します。研究開発と商業生産の間に存在する実用化の障壁(いわゆる「死の谷」)を克服するため、DOEは「Super Intelligence(SI)」という用語を用いながら、デジタルツインや製造工程の監視・制御などの技術を活用し、工場の歩留まり改善や生産効率の向上を目指す構想を示しています。
電池のサプライチェーン強化は、国際的な調達網に関わる日本にとっても関心の高い分野です。日本をはじめとする同盟国が電池や関連材料、製造装置の基盤を持つ中、米国が自国内でのバリューチェーン構築と製造技術の確立を進める動きは、国際的な技術連携や供給網のあり方にも影響を与える可能性があります。
今回の国家戦略は、材料加工などの中間工程を含む国内供給網の整備を掲げるとともに、BattManを通じて研究成果を量産工程へ移すための技術的課題に取り組む構成となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













