加速する乳酸菌研究、今度は過敏性腸症候群への有用性が実証

2013年03月13日 16:55

 大腸に潰瘍などの器質的病変がないにもかかわらず、下痢や便秘などが慢性的に繰り返される機能性消化管障害、過敏性腸症候群(IBS)。ライオン<4912>から、水なしで飲める「ストッパ下痢止め」が発売され、大きく宣伝されていることなどからも、IBSとみられる突発性の下痢に悩む人が多いことは想像に難くない。しかし現在のIBS治療は、ストレス因子の排除や抗不安薬投与など、患者のストレスを緩和する方法や便通異常を改善する対症療法に留まっているという。

 こうした中、ビオフェルミン製薬<4517>が、乳酸菌の一種であるフェーカリス菌SF3B株が過敏性腸症候群に伴う腹痛(内臓痛覚過敏)を抑制することを発見したと発表。乳酸菌製剤は、既に実際の医療現場においてIBS患者に対して使用されているものの、IBSの主症状である腹痛に対する効果については不明だったという。今回の発表は、これを明らかにする一端となり、対処療法から一歩進んだ治療法が広がりそうである。

 同社は、実験的過敏性腸症候群モデルを用いて、整腸剤の新ビオフェルミンSおよびビオフェルミン配合散に含有されているSF3Bの腹痛(内臓痛覚過敏)に対する効果について検討。動物モデルによる実験では、SF3Bを3週間連続経口投与すると、SF3Bの菌数依存的に内臓痛閾値の有意な増加がみられ、腹痛を抑制することを確認。また近年指摘されている、IBSの病態発症に結腸粘膜における肥満細胞の増加および活性化が関与していることに対しても、肥満細胞からのヒスタミン遊離に対し、SF3Bは菌数依存的に抑制することが確認されたという。

 近年乳酸菌に関する研究が進み、数々の有用性が指摘されている。昨年、アサヒグループホールディングス<2502>が味の素<2802>からカルピスを買収した例に見られるように、乳酸菌は、健康食品業界や医薬品業界、飲料業界など、様々な業界を動かす主役となっている。研究が進むにつれ、こうした傾向は今後ますます加速するのかもしれない。(編集担当:井畑学)