日立製作所<6501>が、携帯情報端末で指定した位置へ自律走行ができる「任意地点自律送迎機能」を備えた一人乗りの移動支援ロボット「ROPITS」を開発したと発表。任意地点まで自律的に搭乗者を迎えに行ったり、目的地まで連れて行ったりすることが可能で、市街地の広い範囲だけでなく、立体交差部分など高さの異なる歩道や建屋内での異なる階の歩行空間へのアクセスも可能だという。
「任意地点自律送迎機能」とは、携帯情報端末に表示された予約・操作用画面において、地図上で任意地点を指定すると、その位置まで自律走行することが出来る機能のこと。茨城県つくば市のモビリティロボット実験特区(つくば特区)の歩道における「ROPITS」の送迎実験では、目的地の座標(緯度・経度)に対して誤差1m以内に到着することが確認されているという。
また、レーザ距離センサとステレオカメラが搭載されており、そこから測定した3次元環境形状情報を融合することで、広い場所では速度を保ちながら障害物から離れ、狭い場所では障害物の近くを減速して走行し、また歩行者が接近した場合には自動停止するなど、様々な障害物が存在する歩道をスムーズに移動することが可能とのこと。車体の安定性に関しても、衝撃を吸収するサスペンションと、車輪の上下位置を自由に制御できる駆動装置を直列に配置することで、車体の状態を常に水平に保ち、うねりや凹凸のある歩道でもバランスを崩さずに走行できるという。
パーソナルモビリティに関しては、一時期話題となったセグウェイや、トヨタ<7203>のi-REAL(アイ・リアル)など様々なメーカーから発表され、徐々に認知度も上がりつつある。こうした中で、高齢者や歩行が困難な人の近距離移動の利便性を向上させるこの開発には、時代のニーズとも相俟って、期待が高まるところであろう。しかし、歩行者や自転車が行きかう路上で、どこまで実用性があるのか。自動車をメインとした道路事情の中、道の隅の狭い場所で歩行者は肩をすり寄せ、自転車は合間をぬって走行している。こうした現状で、さらにパーソナルモビリティを優先した交通倫理を強要されるのであろうか。新たな技術を実社会に持ち込む際の、自治体や行政の姿勢にも注目すべきであろう。(編集担当:井畑学)