高齢化社会を支える福祉ロボット

2013年02月17日 19:09

 少子高齢化が進むにつれ、これから益々課題となってくるであろう介護問題。それに対応すべく、大手企業が福祉ロボット事業に乗り出している。その中でも、いち早く福祉ロボットの開発と実用化に取り組んでいるのが、大和ハウス工業だ。同社では、アザラシの赤ちゃんをモデルにした癒しとセラピー効果抜群のメンタルコミットロボット「パロ」や、床下点検などに活躍する狭小空間点検ロボット「moogle」など、様々なアプローチでロボット事業を展開しているが、福祉に利用されて注目を集めているのが、同社の代表的なロボットスーツ「HAL」(福祉用)である。

 HALは「Hybrid Assistive Limb」の略称を持つ世界初のサイボーグ型ロボット。筑波大学大学院システム情報工学研究科教授であり工学博士の山海嘉之氏が2004年に設立したロボットベンチャー企業「CYBERDYNE」が研究・開発を手掛けており、大和ハウス工業が総代理店としてリース販売を行なっているロボットだ。装着者の皮膚表面に貼り付けられたセンサを使って、人が筋肉を動かそうとしたときに皮膚表面に流れる微弱な生体電位信号を読み取り、パワーユニットを制御して、装着者の筋肉の動きと一体的に関節を動かして動作支援を行う。HALの素晴らしいところは、この一連の動作は実際に筋肉が動き出すよりも速く行われるため、時間差による違和感もなく、意思のままに下肢を動かすことができることにある。

 そして「ロボットスーツHAL・福祉用」は、このHALシリーズの技術を福祉用途に特化したもので、「歩くことの素晴らしさを取り戻す」ことをコンセプトに誕生した、福祉ロボットだ。自分の力で立ちたい・歩きたいと願う、脚に障害のある人や脚力が弱まっている高齢者の脚力・歩行機能をサポートする。ロボットスーツHAL福祉用はリース展開されているが、単脚で40万円、両脚で55万円の初期導入費用はかかるものの、月々のレンタル料金は、契約期間などにもよるが36ヵ月で月々174,000円となっている。

 また、トヨタ自動車<7203>も、トヨタ記念病院などの医療機関や介護専門機関と連携し、介護・医療の現場ニーズをロボットの設計にフィードバックしながら、藤田保健衛生大学と共同でロボット開発を進めてきた。そして、早ければ2013年度中に「自立歩行アシスト」「歩行練習アシスト」「バランス練習アシスト」「移乗ケアアシスト」の4種類の介護・医療支援向けロボットの実用化を目指しているという。いずれのロボットにも、トヨタが誇る、高速・高精度なモーター制御技術と二足歩行ロボット開発で進めてきた安定性の高い歩行制御技術やセンサ技術など、先進的な要素技術が結集されたもので、医療と介護の現場からは期待と注目が集まっている。

 年老いても、障害があっても、できれば自分の力で生活がしたい。そんな願いをアシストしてくれる福祉ロボット技術の開発がもっと進めば、より人に優しい明るい未来が訪れることだろう。(編集担当:藤原伊織)