富士経済の調査によると、2011年は1兆8649億円であったものが2020年には2兆9661億円にまで市場が拡大すると見られているパワー半導体。中でも次世代パワー半導体として注目を集め、市場が立ち上がったSiC(シリコンカーバイド)系パワー半導体は、従来のシリコンを採用した製品に比べて高電圧・大電流でも安定的に動作し、動作時に電力が熱として失われる電力損失を大幅に削減できることが特徴で、2011年は63億円であったその市場規模が、2020年には2011年比13.7倍の860億円へと急拡大すると見られている。
SiCはその特徴から、高効率化、小型化が求められる通信機器、サーバー、インバータなどの産業機器、鉄道・車載機器用途での高いニーズがある。このニーズを捉えるべく東芝<6502>が、産業機器・車載機器向けパワー半導体として、SiCを採用した製品を今月末から量産開始すると発表した。第一弾として、電流の逆流を防ぐ整流素子であるショットキバリアダイオードの量産を開始。サーバー用電源や太陽光発電用パワーコンディショナーなどに適した製品で、従来のシリコンのダイオードに比べ電源用途で素子の損失として50%以上の低減が可能だという。月産100万個を予定しており、2020年にはシェア30%を目指す。
フルSiCパワーモジュールを世界で初めて量産開始したローム<6963>と、フルSiCパワー半導体モジュール適用のエレベーター制御装置開発や、高硬度なSiC素材を同時に40枚加工可能なワイヤ放電加工技術を開発した三菱電機<6503>が、日本におけるSiCパワー半導体市場を確立してきたと言える。そこに東芝が本格参戦する形である。このまま三つ巴で市場が拡大していくのか、新たな勢力が参戦して市場を盛り上げるのか、注目の集まるところであろう。(編集担当:井畑学)