エネルギーへの関心が高まる一方で、影の薄まる低炭素化への取り組み

2013年03月26日 08:05

 昨年来続くメガソーラー発電所の建設ラッシュに代表されるように、エネルギーに関するものが圧倒的多数を占めている企業による環境問題対策。一方で、一昨年の震災までは中心であった低炭素化に関しては付随して語られるに過ぎず、ほとんど関心・注目を集めなくなっている。

 関心・注目を集めないものの、細々と啓蒙活動は続いている。今年1月には「第2回カーボン・オフセット大賞」が発表。環境大臣賞と経済産業大臣賞が各1団体、優秀賞3団体、奨励賞5団体、特別賞1団体が表彰された。環境大臣賞を受賞した株式会社環境思考と三重県大台町とは、エコステーションに持ち込まれたリサイクル資源の種類と量に応じて付与されるポイントを活用して、リサイクル品を持ち込む際の自動車の利用に伴うおおよそのCO2排出量を「見える化」した上で、オフセットする取組を実施。付与されるポイントは、地元商店街などでの買い物券、日本赤十字などの義援金にも活用ができるというものである。また経済産業大臣賞は、株式会社ツルハ<3391>のドラッグストアで購入されたユニ・チャーム<8113>商品の購入代金の一部で、株式会社ツルハが創出した国内クレジットを購入し、東日本大震災の被災地にある福島工場における約1ヶ月分のCO2排出量をオフセットする取組でユニ・チャームが受賞。その他、日本興亜損害保険や日本野球機構、日本郵便などが優秀賞や奨励賞、特別賞を受賞しているが、こうした取組や表彰が話題に上ることは、ほとんどなかったと言えるであろう。

 こうした中、カーボンオフセットに関し、新しい制度が始まる。2008年10月に開始された国内クレジット制度は、中小企業等の低炭素投資を促進し、温室効果ガスの排出削減を推進することを目的としたもの。2009年度末には、承認事業が297件、クレジット認証が約3.6万t-CO2であったのが、2011年度末には、承認事業が1037 件、クレジット認証が約44.9万t-CO2となっている。また、J-VER制度は、自らの活動に伴い発生する排出量を他の場所の削減量(クレジット等)で埋め合わせて相殺するカーボンオフセットの取組により、国内における排出削減・吸収を一層促進することを目的として、2008年11月に開始。2009年度末には、登録プロジェクトが26件、クレジット認証が約1.5万t-CO2であったのが、2011年度末には、登録プロジェクトが201 件、クレジット認証が約29万t-CO2となっている。このように、着実に実績を伸ばしてきたカーボンオフセットの取組であるが、両制度とも2012年度で一旦終了することとなっている。その為、両制度を統合した新クレジット制度が今年から開始されるのである。

 2国間の排出権取引など、制度導入当初は何かと話題となり、つい先日も、バングラディッシュとの間で低炭素成長パートナーシップへの署名が交わされたが、ほとんど報じられていない。新制度開始の告知も十分とは言えない。地球温暖化それ自体に疑義も出ており、低炭素化への関心が低下している。現在実施されている取り組みは、制度導入当初の盛り上がりの惰性で行われているに過ぎないのではないか。今後取り組みを進めるにあたって、今一度「地球温暖化対策としての低炭素化」というものを正面から議論する必要があるのかもしれない。(編集担当:井畑学)