電話反応よる広告効果測定はまだ時代遅れではないのか

2013年03月28日 10:13

 電通の発表した「2012年日本の広告費」によると、屋外広告が前年比103.8%、交通広告が同103.9%、折込広告同102.1%、DM同101.3%となるなど、広告市場が回復基調を見せており、これに直接影響を受ける印刷業界にも明るい兆しが見え始めている。一方で、広告媒体のインターネットへの移行は加速度を増しており、余談を許さない状況でもある。こうした中、ラクスルと楽天 グループの通信事業会社であるフュージョン・コミュニケーションズが、紙媒体の広告物の印刷から広告効果測定までを一貫提供する取り組みにおいて業務提携を行うと発表。少しでも差別化を図ろうと動きだしたようである。

 ラクスルは、オンラインの印刷代理店である「ラクスル ザ・プリントエージェンシー」の運営をしており、全国1400以上の印刷会社と取引を行い、印刷会社の空き時間を活用することで低価格・高品質の印刷物を提供。一方のフュージョンは、広告別に、個別のお問い合わせ電話番号を掲載することで、「いつ」「どこから」「どれだけ」電話の着信があったのかをログとして管理し、広告の効果測定を行うことができるサービス「コール・インサイト」を提供している。この両社が業務提携を行うことで、「ラクスル」で紙媒体の広告物を発注する際に、その広告の効果測定のために広告内に掲載する、効果測定用電話番号を取得することが可能となる。そして、当該電話番号にかかってきた電話に関する情報の管理、レポートの作成などが「コール・インサイト」により行われ、顧客に提供される。これにより紙媒体の広告効果測定が可能になり、より効果的なマーケティングに繋げられるということである。効果測定サービスを印刷物とともに低価格で提供することで、これまでは難しかった中小企業への導入が期待されるという。

 紙媒体の広告物にQRコードでも印刷するだけで、同様のサービスは可能なのではないだろうか。こうした疑問が湧くのは当然のことであろう。今や老若男女が携帯電話やスマートフォンを持ち、簡単にQRコードを読み取れる。電話による人との接触がない分、コンタクトを取ることに対するハードルも低いであろう。団塊世代はデジタルシニアともよばれ、こうした機器に抵抗のない人が多い。より高齢な層をメインターゲットとしているのか。電話でなければ問い合わせを受けられない業種やサービスとは、一体どういったものであろうか。比較的IT化の進んでいない中小企業がメインターゲットになるとはいえ、どこか時代の流れに取り残されたような印象が拭えない。新しく開始されるサービス自体の動向よりも、今回の取り組みを足がかりとして、どこまで紙媒体とデジタル機器との融合・共存を進めることができるのか。そちらの方に注視すべきであろう。(編集担当:井畑学)