NYダウは52ドル高で史上最高値更新。S&P500も史上最高値を更新。キプロスの銀行が営業を再開しても混乱が起きず安心感がひろがったが、アメリカの経済指標には少し陰りが出ている。29日は復活祭(イースター)前の聖金曜日(グッド・フライデー)で休場なので、これで3月の取引は終了。29日朝方の為替レートはドル円が94円前半、ユーロ円が120円台後半で、前日とあまり変わらない水準だった。取引開始前に国内の経済指標が相次いで発表され、2月の鉱工業生産指数速報値は-0.1%で3ヵ月ぶりの低下。2月の全国消費者物価指数(CPI)は-0.3%で前月より0.1ポイント低下しデフレはまだまだ終わらない。2月の完全失業率は4.3%で0.1ポイント悪化、有効求人倍率は0.85倍で変化なしと改善は足踏み。総務省の2月の家計調査の2人以上世帯の消費支出は+0.8%で1.6ポイント低下したが、1月の+2.4%がサプライズだったので元に戻ったとも言える。
日経平均は69.57円高の12405.53円と12400円台を回復して始まったが、すぐ12300円台に戻りTOPIXだけ先にマイナスに。日経平均も後を追ってマイナス圏に落ち込んだ。その後は日経平均は前日終値をはさんでプラスとマイナスを行ったり来たりしてもTOPIXはずっとマイナスで、後場に大口買いが入って日経平均が上昇しても「NTねじれ現象」のまま最後までもつれ込んだ。日経平均終値は61.95円高の12397.91円、TOPIX終値は-2.07の1034.71で今週、今月の取引を終えている。日経平均の前週末比は2週ぶりにプラスに戻り、前月末比は8ヵ月連続で上昇で、年度では23%の上昇率になった。欧米が復活祭休暇入りし、日銀の金融政策決定会合を来週に控えていることもあって、売買高は25億株、売買代金は2兆円割れと商いはやや薄かった。
値下がり銘柄1179が値上がり銘柄443の2.6倍もあり、TOPIXがマイナスに沈みながら日経平均が61円高だったのは、「期末のポジション整理」と言えば聞こえはいいが、後場に波状的に入った月末恒例ドレッシング買いの〃年度末スペシャル〃大口の先物買いのおかげ。720円高のファーストリテイリング<9983>1銘柄だけで日経平均を28円も押し上げ、上昇幅の45%を占めたように、「寄与度御三家」など〃お化粧のり〃のいい銘柄ばかり狙って買われ、日経平均にコテコテの〃厚化粧〃が施された。しかし、甘利明経済再生担当大臣が述べた「3月末に日経平均13000円」を実現させる「甘利越え」は、あまりにも遠すぎた。
東証1部業種別騰落率の上位セクターは電気・ガス業、非鉄金属、ゴム製品、食料品、情報・通信業など内需系が多かった。下位セクターは水産・農林業、不動産業、パルプ・紙、証券・商品先物取引、銀行業と、3月は盛んに買われていた金融緩和関連、TPP関連が多く入っていた。
ソフトバンク<9984>は20円高で今週は5日間連騰。前日に続いて電力株が買いを集め、東京電力<9501>は23円高で値上がり率10位、売買高2位、売買代金7位とランキング入りした。ハイテク系ではファナック<6954>が100円高、京セラ<6971>が220円高で日経平均にプラス寄与。自動車株はトヨタ<7203>が35円高、マツダ<7261>は6円高だったが、ホンダ<7267>は45円安、日産<7201>は2円安と高安まちまち。金融関連は三大メガバンクが揃ってマイナスで、野村HD<8604>、オリコ<8585>、アイフル<8515>も下げた。
前場では不動産や含み資産関連株が悪く、東証REIT指数は午前10時頃には下落幅が100ポイントを超えていたが、それが後場には一時0.01ポイント安まで戻すリカバリーを見せ、不動産株も下げ幅を圧縮。それでも三井、三菱、住友の大手3社の終値はマイナスだったが、不動産ファンドのケネディックス<4321>はマイナスからプラスに一変し、売買代金1位に入った。
オリンパス<7733>の医療関連子会社4社を買収すると報じられたノーリツ鋼機<7744>は一時ストップ高の80円高で昨年来高値を更新し値上がり率2位に入った。オリンパスは13円安。三菱UFJモルガン・スタンレー証券が投資判断を引き上げた三井金属<5706>が後場に買われ24円高で値上がり率6位、売買高13位。大和証券が半導体製造装置の受注環境上向きを確認したとして投資判断を引き上げた東京エレクトロン<8035>は175円高。iPS細胞がらみで日本網膜研究所というバイオベンチャーに資本参加すると報じられた大日本住友製薬<4506>は93円高で昨年来高値更新。前日に「黒字転換を図る」というプリンター事業戦略を発表したOKI<6703>は9円高で3日続伸し値上がり率12位、売買高4位と投資家から好印象を持たれている。
午後、ロックスター御用達のアメリカのギターメーカー、ギブソンが買収というニュースが流れた音響機器のティアック<6803>は一時急騰したが、東証が売買停止措置をとったため2円高どまり。携帯電話事業を手放すことを前提にレノボと事業統合交渉中と伝えられたNEC<6701>は売買高11位と投資家の関心を集めたが5円安だった。
この日の主役はパナソニック<6752>。前日大引け後に中期経営計画と大坪文雄会長の退任を発表した。しかし、事業部制を22年ぶりに復活させて「2015年度の営業利益3500億円以上を目指す」には「驚きはない」、660億円の赤字を抱えるテレビや半導体のような現在の赤字事業を「2015年にゼロにする」には「固定費削減など止血の具体策がはっきりしない」というようにアナリストの評価は辛らつでネガティブなものばかり。それを反映してこの日、売買高、売買代金ともに8位と売り浴びせられ、50円の大幅安で値下がり率ランキング4位に入った。同じ巨額最終赤字三兄弟でも、資産処分を大胆に進めてアナリストも好意的で17円高、売買代金3位と投資家の人気も上々のソニー<6758>、本社部門の人員を半分にするリストラ策を発表して4円高になったシャープ<6753>とは対照的だった。31日は復活祭だが、受難のパナソニックに「復活の日」は来るのだろうか。(編集担当:寺尾淳)