【日経平均】権利付き最終日でも買いは続かずに74円安

2013年03月26日 22:02

NYダウは64ドル安、一時は117ドル安になり、キプロス問題がまだ尾を引いている。ユーロ圏財務相会合の議長を務めるオランダのデイセルブルム財務大臣が「キプロスのケースは他国のひな型になる」とサプライズ発言。あわてて「特殊なケースだ」と言い直したが、口から先は世間で後悔先に立たず。大口預金者に負担を求めるのはキプロスに限った話ではないらしいという危惧で資金がユーロから円に逃避し、26日朝方の為替レートはドル円が94円近辺、ユーロ円が121円近辺と大きく円高に振れた。

 それでも、3月期決算企業の権利付き最終売買日を迎えた日経平均は84.67円安の12461.79円と、下げてもそれほど大幅ではなく始まる。黒田日銀総裁が国会に呼ばれて衆議院で改めて所信を述べて安心感がひろがったこと、円高が止まって少しだけ円安に戻したこともあり、下げ幅を圧縮して12500円台に定着。後場は途中、12456円まで下げる場面もあったが、TOPIXがまず切り返して2時30分頃から時々プラスになる場面もあり、日経平均も12500円台に乗せてこのまま終えるかと思われた。

 ところが、最後の最後のどんでん返しで日経平均が急落し、終値は74.84円安の12471.62円に。株式市場には魔物がすみ、結果はゲタをはくまでわからない。値上がり銘柄774銘柄、値下がり銘柄831と僅差だったため、TOPIXのほうの終値は-2.87の1044.42と小幅安だった。売買高は29億株で売買代金は2兆円を超えたが、権利付き最終日で需給が需要に傾くはずなのに配当・権利取りの盛り上がりはいまひとつ。本来なら上昇するはずの日に下落して12500円を割り込んだため、3月末に日経平均が13000円をオーバーする「甘利越え」は、何かサプライズでもなければ厳しい情勢になってきた。

 上昇したセクターは電気・ガス、食料品、陸運、その他金融、医薬品、情報・通信など。下落したセクターは空運、海運、ゴム、鉄鋼、鉱業、石油・石炭、証券などだった。

 2時台のTOPIXの上昇は、翌日の配当落ち分を修正するために投資信託などが行う「再投資買い」とみられ、TOPIX先物に買いが入った。押し上げ効果は約9ポイント分という観測で、恩恵を受けたのが時価総額が巨額のトヨタ<7203>で、前場のマイナスから午後2時台にプラスに浮上し、一時は65円高になった。しかし終値は10円安で、一時15円高で終値30円安の三井住友FG や一時60円高で昨年来高値を更新しながら終値は値動きなしの武田 ともども、大引け間際に日経平均先物が大きく下落して大型株が利食い売りされる〃魔物〃のいけにえになった。これもまた権利付き最終日ならではのドラマだろう。

 2時台には別のサプライズもあった。NEC が51%を保有する子会社NECモバイリング<9430>の株式の売却先を選定中というニュースが飛び込み、NECモバイリング株はストップ高の700円高で値上がり率3位に入った。それまで250円を下回っていたNECの株価は事業再編、財務改善が評価されて258円まで買われ、終値は10円高の253円だった。

 ファーストリテイリング<9983>は550円下落し日経平均のブレーキ役。銀行、証券の大手は弱含み。朝方の大幅円高を反映して自動車株は軒並み下落し、ホンダ は35円安、スズキ と富士重工<7270>は揃って45円安、マツダ<7261>は13円安で、ブリヂストン<5108>も70円安だった。ハイテクセクターもソニー<6758>が46円安、京セラ<6971>が190円安、トレンドマイクロ<4704>と東京エレクトロン<8035>が揃って85円安、アドバンテスト<6857>が36円安と不振をきわめた。鴻海からは結局1銭も出資がなく提携話が完全に終了したシャープ<6753>も5円安。その中で終始元気だったのが230円高のファナック<6954>だった。

 日経新聞朝刊1面で、TPPにからんで農家への新しい交付金制度を政府が検討と報じられ農業関連の井関農機<6310>は10円高。同じ人材派遣業のインテリジェンスを買収するニュースを受けてテンプHD<2181>は69円高で昨年来高値を更新している。

 石炭関連の住石HD<1514>は午後、オーストラリアの採炭企業から配当が入ることによる最終利益見通しの上方修正を発表して急伸し、15円高で値上がり率ランキング1位に入った。かつて常磐炭田で石炭を採掘していた「スパリゾートハワイアンズ」の常磐興産<9675>も前日、東京電力<9501>からの補償金で最終利益を上昇修正という発表を行い昨年来高値を更新して12円高。同社は施設やホテルを利用できる復興記念の特別株主優待を実施するため、権利取りの最後のチャンスとしても買われたようだ。その株主優待狙いでかつては盛んに買われたJAL<9201>は110円安、全日空<9202>は4円安だったが、JR東海<9022>は100円高、JR西日本<9021>は95円高、JR東日本<9020>は50円高。株主優待の権利取りで割引チケットを手に入れるなら、今年は787の問題で欠航便が相次ぐ国内線よりも新幹線ということか?

 この日の主役はソフトバンク<9984>。前日にガンホー<3765>へのTOB買い付けによる子会社化を発表し、保有比率は50%を超える見通し。相手が「パズル&ドラゴン」が大当たりして株価が暴騰した注目銘柄だけに、野村證券はレーティング「BUY」を継続し目標株価を4500円に引き上げた。前日も120円高で売買代金4位だったソフトバンク株は95円高の3975円と続伸して連日の昨年来高値更新。7年ぶりに株価4000円台にもタッチした。一方、上場は維持されるがガンホーの株価は4.6%下落。ライバルのDeNA<2432>も48円安だった。ソフトバンクは売買代金ランキング1位、日経平均プラス寄与度1位に入り、関連会社のソフトバンクテクノロジー<4726>も68円高で値上がり率9位に入るなど、この日は「ソフトバンクの日」になった。(編集担当:寺尾淳)