動き出した国家プロジェクト「バイオマス都市」募集開始

2013年03月31日 09:58

 3月22日、農林水産省を中心に、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、環境省の7つの府省が連携し「バイオマス産業都市」を推進する一大国家プロジェクトが開始された。

 これは、バイオマス(木質、家畜排泄物、食品廃棄物など)を活用した地域産業化と地産地消型エネルギーを強化することで、バイオマス産業を軸とした「バイオマス産業都市」として、町や村の活性化を目指す地域計画を国が支援するもの。

 2012年度の補正予算と2013年度の通常予算を合わせて23億円余りを補助金として捻出し、自治体などを支援する方針。2020年に向け、5000億円規模の新産業の形成を目指す。

 そもそも、バイオマス産業都市構想は、2009年に制定された「バイオマス活用推進基本法」が発端となっている。この「バイオマス活用推進基本法」の中で政府は、国が達成すべき目標として2020年までに600市町村においてバイオマス活用推進計画を策定すること、バイオマスを活用する約5,000億円規模の新産業を創出すること、炭素量換算で約2,600万トンのバイオマスを活用することなどを目標として掲げている。

 また、政府が総合的かつ効果的に講ずべき施策として、バイオマスの活用に必要な基盤の整備、農山漁村の6次産業化等によるバイオマス製品等を供給する事業の創出、研究開発、人材育成等を推進することとしている。

 以来、政府はこれまでにも全国各地に「バイオマス産業都市」を展開する戦略を進めてきたが、今回の募集では、11年の東日本大震災の経験や原発問題などのエネルギー問題等も充分に踏まえたうえで、再生可能エネルギーの導入をさらに加速させる狙いを込めて、「バイオマス産業都市」の拡大に乗り出す。

 補助金の支給対象は、あくまで市町村が最優先となるが、都道府県や、場合によっては民間企業との共同体も候補になることが可能だ。ただし、本事業における地域を選定するにあたっては公募制をとっており、バイオマス産業都市構想として、2013年度に実施する詳細な事業計画だけでなく、5年後、10年後の展開予定や展望も盛り込んで提案を行なう必要がある。

 第一次募集の期間は3月22日から4月26日まで行なわれ、第二次の募集も2013年度中に予定されている。2020年に目標通りのバイオマスエネルギー活用を達成できると、電力に換算して年間で約130億kWhになり、280万世帯分、単純計算で原発約1.5基分の電力使用量に相当する規模になる。

 それが成功のモデルケースになれば、さらに全国的な発展も期待出来るだろう。また、そこに新たな産業が創出されることで、経済効果や雇用も期待できる。かつてのハコモノ事業のような、見た目だけ豪華で内容の伴わない補助金獲得のための一時的なハリボテ提案ではなく、日本の未来につながる内容の伴った提案が集まり、有効に活用されることを願うばかりである。(編集担当:藤原伊織)