【日経平均】日銀発表後500円近い高騰で12634円

2013年04月04日 20:48

 NYダウは111ドルの大幅安。アメリカの3月のISM非製造業景気指数、3月のADP雇用者数がともに市場予測を下回ったためだが、特にADP雇用者数の伸び悩みは5日発表の雇用統計への警戒感を呼び、株価下落を誘った。4日朝方の為替レートはドル円が93円近辺、ユーロ円が119円台半ばで前日よりも円高に振れていた。「清明節」でこの日、香港、上海市場は休場で、上海は5日も休みになる。日経平均始値は174.00円安の12188.22円。ドル円が93円を割り込んで一時12100円を下回ったが、売り買いが一巡すると12100円台後半で推移し、前引けの前に少し下げ、後場は少し上がって日銀の金融政策決定会合の結果発表を迎えた。

 「『量的・質的金融緩和』の導入について」と題して発表された主な中身は、目標の「インフレ率2%」を2年以内で達成するためにマネタリーベースを年間60~70兆円増やし、2年で2倍に拡大するという量的緩和。国債以外ではETFの年間買い入れ枠を約1兆円、J-REITの年間買い入れ枠を約300億円に設定。長期国債は月7兆円の大量買い入れを継続し、40年債も対象に含めて平均残存期間を3年から7年に伸ばす。「日銀券ルール」の自主規制枠は一時的に適用を停止する。付利の撤廃や外債の購入は見送られたが、噂された緩和策先送りはなく、「タマ切れ」承知で最初から全部一気に撃ってくるあたり、財務官時代に為替市場と向き合ってマーケットのあしらい方を知っている黒田新総裁おそるべし。発表を受けて長期金利は史上最低の0.425%まで低下した。

 「期待も失望も織り込み済み。よほどのビッグサプライズがなければ市場は動かない」と言われてきたが、おおむね想定の範囲内でも市場は敏感に反応。午後1時40分に発表が始まるとTOPIXはプラスに変わり、日経平均は12200円台、12300円台をアッと言う間に通過して12400円台に乗せた。午後2時台には12462円をピークに短期の利食い売りとみられる動きで反転してマイナス圏に沈み、再びプラスに浮上するという荒っぽい動きを見せる。この時点で為替はドル円が94円台前半、ユーロ円が120円台後半と、前週の水準まで円安に戻す。さらに大引け前の20分ほどの間に12500円、12600円を次々と突破し、日経平均終値は272.34円高の12634.54円で高値引け。TOPIXは+27.33の1037.76だった。日経平均の1日の上昇幅は559円もあり、寒風が吹きすさんだ4月1日、2日とはまた別の気流の「春の嵐」に見舞われた。売買高は42億株。売買代金は3兆円の大台に乗せ、メジャーSQの3月8日以来の大商いになった。

 東証1部の値上がり銘柄数が1439で全体の約84%を占める全面高で、業種別騰落率は全業種がプラス。上位は不動産、銀行、医薬品、鉄鋼、証券、その他金融、陸運など。下位は空運、電力・ガス、パルプ・紙、非鉄金属、ガラス・土石、卸売などだった。

 「日経平均寄与度御三家」の寄与度は、値動きなしのファーストリテイリング<9983>は0円、35円高のソフトバンク<9984>は4円、300円高のファナック<6954>は12円で16円しかなく、むしろプラスが225銘柄中182と82%を占め、全体で指数を押し上げていた。その中でもキヤノン<7751>は大引け際の上昇も及ばず30円安で6日続落と深刻。15円安のアルプス電気<6770>、15円安のコナミ<9766>、プラント建設の千代田化工<6366>の31円安、日揮<1963>の7円安、銅価など商品市況軟調の影響を受けた資源株の住友金属鉱山<5713>の16円安、三菱マテリアル<5711>の9円安、商社の丸紅<8002>の8円安あたりの下げが目立っていた。一方、輸出関連銘柄が多いハイテク系の値がさ株は金融緩和発表後に為替が円安に振れたこともあり、170円高の京セラ<6971>、10円高の東京エレクトロン<8035>、20円高のアドバンテスト<6857>は前場のマイナスから大きく上昇してプラスで終えている。自動車はトヨタ<7203>が135円高、ホンダ<7267>が120円高、マツダ<7261>が10円高で、これも後場にマイナス圏から急浮上した。

 金融緩和の発表なので銀行、不動産は株価を大きく上げる。業績上振れ観測報道が出た三大メガバンクはともに5%を超える上昇率で、4億株以上売買されたみずほ<8411>が10円高で200円台に乗せ、三菱UFJ<8306>が30円高、三井住友FG<8316>が245円高。証券の野村HD<8604>は19円高だった。アイフル<8515>は一時ストップ高の100円高で値上がり率2位、オリコ<8585>は28円高で値上がり率9位、売買高4位に入っている。

 東証REIT指数は後場プラスに転じ、大手不動産の三井不動産<8801>は212円高、三菱地所<8802>は191円高、住友不動産<8830>は390円高で、ともに大幅高で年初来高値更新。住友不動産は値上がり率8位に入っている。不動産含み資産銘柄として人気のよみうりランド<9671>は所有する川崎競馬場の3号スタンドを解体して商業施設を建設するというニュースで買われ64円高で値上がり率4位に入った。不動産の資産をただ含むだけでなく、有効活用に踏み切って収益化を図れば投資家はより好感する。

 三菱重工<7011>はフランスのアレバと共同でトルコの新設原発プロジェクトを受注すると日経新聞のトップ記事で報じられ24円高。一方、前日上昇した東京電力<9501>は20円安で値下がり率1位になり、政策がらみで買われていた石炭関連の住石HD<1514>は7円安で値下がり率4位とさえなかった。最近好調だった小売など内需系はマイナスではなくても相対的にパッとしなかった。

 この日の主役は「鳥インフルエンザ関連銘柄」。中国では死者が3人に増え、大量のカモの死骸が川を流れてくるなど連日ショッキングな報道が続く。前日の興研<7963>、重松製作所<7980>、ダイワボウHD<3107>などマスク関連に続いて、この日は大手医薬品銘柄が好んで買われた。「タミフル」発売元の中外製薬<4519>は201円高。「イナビル」発売元の第一三共<4568>は45円高。関連会社の富山化学工業が抗インフルエンザウイルス薬「T-705」の国内製造販売承認を申請中の富士フイルムHD<4901>も101円高と買いを集めた。285円高のアステラス製薬<4503>、155円高の武田<4502>、150円高のエーザイ<4523>なども株価を大きく上げた。前場でストップ高になり、150円高で年初来高値を更新し値上がり率ランキング1位に入った大幸薬品<4574>は「正露丸」でひろく知られているが感染管理製品も大きな柱で、二酸化塩素を使った「クレベリン」ブランドの除菌・消臭製品がインフルエンザ対策用として医療機関、介護施設、学校などで広く使われ、家庭用の製品も売れている。(編集担当:寺尾淳)