1ドル100円はお預けで、ミサイルは飛んでこなくて、最後はまぼろしのSQが出現

2013年04月13日 20:18

0205_004

今週の振り返り 651円も上昇した週とは思えない紆余曲折

 
 来週の展望 日経平均は「一服」「軟調」になりそう

 日経平均とNYダウを通貨単位を無視して比べる「NN倍率」は、5日の0.87から12日は0.90に縮まり、リーマンショック後に割り込んだ1を再び超える日が近づいている(NYダウは前日値)。NYダウも史上最高値を更新して好調だが、日銀の「異次元の金融緩和」発表後の日経平均はそれを上回る勢いで伸びており、今や世界から注目の的。ウォール街の大手証券会社のディーリングセクションの目下最大のテーマは「日本」で、わずか半年前まで社内で「ジャパン・パッシング」「ジャパン・ナッシング」され縮小続きで肩身の狭い思いをしていた日本株担当のトレーダーは、会社の都合で促成栽培で養成され、他社から引き抜かれている。そんな海外の機関投資家の「クロダ・リスペクト」しての日本買いブームで、半年前まではSQの日以外は1兆円に届かないのが当たり前だった東証1部の売買代金は、12日まで7日続けて3兆円を超えている。

 そんな海外機関投資家に今週、先物買いのターゲットを日経平均先物からTOPIX先物にシフトする動きがあったようで、今週のTOPIXの上昇率は+7.72%で日経平均の+5.02%を2.7ポイント上回った。日経平均とTOPIXの数値の比率「NT倍率」は、5日終値段階の12.0倍から12日終値段階の11.7倍へ圧縮している。

 日経平均は身長、TOPIXは体重にたとえられることがある。日経平均は値がさ株の株価の指数、TOPIXは時価総額の指数なので、適切なたとえだろう。子どもの成長期には身長がまず伸び、後で体重が増えてくるように、株価の上昇期にも日経平均がまず伸びて、それに追いつくようにTOPIXが後から増えていく。その意味では今はちょうど身長が伸びる時期から体重が増える時期への変わり目、ということが言えるだろう。

 子どもの体重が増えれば体力がついて丈夫になって病気に強くなるように、日本株全体の時価総額が増加すれば株式市場が強靱になり、懐が深くなって多少のショックではビクともしなくなり、それだけ投資先としての魅力が増してくる。だがその代わりに、「大きくなったなあ」と子どもの見た目の成長ぶりを感じさせる身長の伸びにたとえられる日経平均の上昇ペースは、それ以前よりも鈍化していくことになる。

 今週は、終値で日経平均がマイナスでTOPIXがプラスになる「NTねじれ現象」が起きた日が9日と12日の2回もあった。たとえて言えば、身長が伸びないで体重だけが増えた日である。それでも週間でみると日経平均も5%上昇し、週足では今年2番目の伸びだったわけだが、来週は日経平均にそこまでは期待できないと思われる。

 その理由として挙げられるのが、マイナーSQ算出日の12日の東京市場で日経平均が大引けまで13608円の推定SQ値を上回れず「まぼろしのSQ」が出現したことで、推定SQ値が上にくるまぼろしのSQはピークから下落に向かうサインといわれている。今週のように「SQ値は何が何でも13500円に乗せる」という強い意思が働かないこともマイナス材料になるだろう。4日に世界を驚かせた「クロダ・サプライズ」の賞味期限も今週末あたりまでだった。しかも12日終値の騰落レシオは121%だが25日移動平均線からの乖離率は5%を上回り、過熱とまではいかないが日経平均は高値圏にある。それらを考え合わせると、来週は「一服」「軟調」の週になり、上げたとしてもSQ値の13608円あたりが天井になると思われる。来週、為替が1ドル=100円台に定着したとしても、今週はそれにあと数銭まで迫っていたので、「乗せた」「ケタが増えた」という気分だけの問題で株価への影響は大きくはないはず。ただ、昨年末からの上昇相場で「アノマリー破り」がけっこう起きているので、その分を加算して上限は13700円というところだろうか。

 もっとも、日経平均の下値のほうはそれほど大きくは下落しないとみる。最もショックが大きいと思われるのは北朝鮮のミサイル発射という地政学的リスクだが、もし発射しても軍事衝突までエスカレートしなければ下げても13200円ぐらいまでで底堅いだろう。半年前と比べると日本株は相当程度、外部からのショックに対し強靱になっているからである。ただし、戦争が起きた場合は北朝鮮がアッという間に降参するか、無力化してくれればいいが、何カ月もズルズル続けられると世界経済への打撃は半端ではないことを覚悟しなければならない。

 ということで来週の日経平均は、13200円~13700円のレンジとみる。その来週の経済指標は、国内では15日に2月の鉱工業生産確報値、2月の設備稼働率指数、17日に3月の消費者態度指数、18日に3月の通関ベースの貿易統計、3月の百貨店売上高、3月の首都圏・近畿圏マンション市場動向、19日に景気動向指数改定値がそれぞれ発表される。2月期決算企業の決算発表は15日の吉野家HD で終了し、来週は3月期の決算発表が本格的に始まって、17日に総合メディカル 、18日に安川電機 、19日にジャフコ 、光世証券 、東京製鐵 などが発表する予定になっている。それとは別に新聞では業績観測報道もたくさん流れて、市場は業績相場の様相を濃くしていくだろう。なお、15日はオリエンタルランド の「東京ディズニーランド」が開業30周年を迎え、16日にはソニー とオリンパス が共同出資した医療事業の合弁会社「ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ」が設立される。

 海外の経済指標は、15日に中国の1~3月の実質GDP、3月の鉱工業生産、3月の小売売上高、3月の都市部固定資産投資額、ユーロ圏の2月の貿易収支、アメリカの4月のNY連銀製造業景気指数、2月の対米証券投資、4月のNAHB住宅市場指数、16日にユーロ圏と英国の3月の消費者物価指数(CPI)、ユーロ圏の4月のZEW景況感調査、アメリカの3月の消費者物価指数(CPI)、3月の建設許可件数、3月の住宅着工件数、3月の鉱工業生産、3月の設備稼働率、17日にユーロ圏の2月の建設支出、アメリカの「ベージュブック(地区連銀経済報告)」、18日にアメリカの3月の景気先行指標総合指数、4月のフィラデルフィア連銀景況指数、19日にユーロ圏の2月の経常収支が、それぞれ発表される。15日の中国の経済指標発表ラッシュと、アメリカに関しては今週の小売指標に続く来週の住宅指標が重要になる。

 アメリカでは来週、主要企業の決算発表がピークの時期に入り、15日にシティグループ、16日にインテル、コカコーラ、ゴールドマンサックス、ヤフー、ジョンソン&ジョンソン、17日にバンク・オブ・アメリカ、アメリカン・エキスプレス、イーベイ、18日にマイクロソフト、IBM、モルガン・スタンレー、グーグル、ベライゾン、ノキア、AMD、19日にGE、マクドナルドの1~3月期決算の発表が行われる予定。史上最高値圏のNYダウは企業業績にけっこう振り回されそうだ。

 なお、18~19日にG20財務相・中央銀行総裁会議がワシントンDCで開催され、麻生財務大臣に伴われて日銀の黒田新総裁のワールドデビューになる。G20で各国はデフレ脱却を目指した日本の異次元の金融緩和をリスペクトしてくれるのか。それとも一部の国が「日本は通貨安政策をやめろ」と文句をつけてきて波乱が起きるのか。財務官時代は「通貨マフィア」の一員だった黒田総裁は「為替をターゲットとした政策ではない」と説明しているが……。19~21日は同じワシントンDCでIMF・世界銀行春季会合が開催される。ヨーロッパの債務問題が取り上げられる可能性があり、「ユーロ圏ではキプロスの次はスロベニアが問題になる」と今しきりに言われているのも、ちょっと気になるところだ。(編集担当:寺尾淳)