太田昭宏国土交通大臣自ら建設業界団体トップに対し、技能労働者の賃金水準引上げや社会保険加入の徹底を直接要請する異例の措置をとる。18日に要請する。要請では賃金水準の引き上げのほか、復旧・復興事業や公共事業の迅速・円滑な施工の確保もあわせて要請する。
要請は都内の霞山会館で、日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会のトップに対し、太田大臣のほか、鶴保庸介建設副大臣、松下新平国土交通政務官らが同席して行う。
建設業界では個別工事の競争入札で競争激化を背景に、法定福利費を削ってダンピングしたり、下請けへの指し値などでコストを抑えるなどのケースもある。このため下請企業を中心に雇用や医療、年金保険の未加入企業が存在し、このことが技能労働者の処遇を悪化させ、業界への若年入職者の減少や就職後の離職率をあげることにつながっている。
建設産業専門団体連合会の報告では建設技能労働者確保に関する調査(5年前)で若手建設技能労働者が入職しない原因の筆頭は「収入の低さ」(57.7%)だった。また「仕事のきつさ」(44.3%)や「作業環境の厳しさ」(36.3%)などのほか「社会保険など福利の未整備」をあげた人も18.7%にのぼった。
離職率をみると厚生労働省が平成21年3月卒業生を対象に行った調査で就職後3年以内の離職率は大卒者の場合、製造業が15.6%に対し建設業は27.6%と12ポイント高く、高卒では製造業24.4%に対し、建設業は43.7%と4割以上が離職していた。
こうした数字からも賃金引上げや社会保険加入の徹底は業界の担い手育成に欠かせないことが浮き彫りになっている。
あわせて、適正に法定福利費を負担している企業(保険加入企業)の方が受注競争上不利になるという問題もでており、公平な競争と労働環境の整備の両面から行政・元請・下請が一体となって保険加入を推進することが急がれている。
国土交通省では社会保険加入へ企業単位では許可業者の全てを、労働者単位でも製造業相当の加入率をめざしており、太田大臣自ら環境整備を加速させたい姿勢を示したものとみられる。(編集担当:森高龍二)