台湾OTC市場でロート製薬が奮闘

2013年04月30日 14:48

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発売前から店頭でディスプレイされる「ロートジー」(左)と「リセ」(右)

 2011年の日本のOTC市場規模(指定医薬部外品含む、メーカー出荷金額ベース)は、前年比0.2%増の7,850億円と推計(矢野経済研究所調べ)。市場全体の成長率は前年比で微増している。しかし、日本市場の世界医薬品市場に占める割合は近年では10%以下になるなど、年々低下。世界的にも日本の医薬品市場の重要性の低下が話題となっているようだ。

 そのような国内市場の低迷の中、アジアを中心に海外市場に活路見出す企業が増加しているという。なかでも台湾は親日国家という点も踏まえ、日本の製品への関心が高く、OTC市場も同様であると考えられる。「日本製を好む台湾人は常に日本で発売され人気のあるアイテムをチェックしています。 チェック方法は、口コミ(友だちやブログ)やガイドブック。台湾で発売されているガイドブックにも、日本ブランド医薬品や化粧品も数多く掲載されています」。そう語るのはロート製薬の広報担当者。また、台湾人が日本へ旅行に行く目的の主はショッピングであり、その際には事前に本やネットで商品を検索してショッピングあるいは、日本旅行に行く友達がいれば、頼んで買ってきてもらうことが主流となっているようだ。

 前述のロート製薬は今年3月、メンソレータム台湾社より目薬「ロートジー」を、5月に「リセ」を発売するが、台湾でのアイケア市場はOTCのセグメントの中でも一番小さく、全体のOTCマーケットサイズの3%、毎年の成長率も約3%以下だという。これは台湾では目薬を点す習慣はあまりなく、子どものころは特に目にトラブルがあれば眼科医へ行く傾向にあるという要因が大きい。また、承認を得るには労力と時間がかかるため、市場はあまり動かないというのもあるだろう。しかし2002年のロート台湾アイケアビジネスは、10年前と比較しても275%アップとなっており、規模は小さいながら、伸長率の高さは大きいという。

 「台湾では新VロートEXとRohto originalを2002年に発売し、C3を2005年に発売しています。今回、8年ぶりの目薬発売となります。台湾での医薬品の新製品は承認が難しいので困難を極めました」。困難を極めた理由は、他国と比較して多くの書面をTFDA(Taiwan Food and Drug Administration)に提出する必要があり、承認取得までもいくつもの質問事項に返答する必要があるということ。特にサイト登録については、詳細な書面を要求され、ほとんどの日本の会社がサイト登録のライセンスの更新にかなりの労力が必要だとされており、台湾のOTC市場に参入し、成功を収めるのは容易ではないようだ。

 過去にも1998年~2001年にかけてCornere Gelと言うアイケアブランドが多額の広告費を投資してブランド育成を心がけたが、これもなかなか成長せず今も発売はされているものの、ブランドとしては縮小されている状況なようだ。その中でも台湾のロート目薬は2011年の売上金額をみると新VロートEXは前年比112%、Rohto originalは前年比114%、C3は前年比111%と着実に成長しているようだ。

 また、台湾は日本と違って目薬市場がそれほど大きくない上、台湾目薬の承認基準は、日本より非常に厳しく新しい製品を導入するのに難しいとされていた。要因としては前述の通り、台湾の薬事法的な目薬の定義が日本のように疲れ目や目の不快感に目薬、とはならず、治療薬としての位置づけであるからだという。しかし近年、日本と同様に、台湾人もPCや携帯などの導入により、目も疲れ、充血や乾燥による不快感を感じているのは確実で、「今回の発売に至る経緯も確かに困難を極めましたが、台湾にはニーズがあり、そこに導入する意義、そしてチャンスがあると信じ、チャンレンジしていく精神で、「ロートジー」「リセ」をメンソレータム台湾に提案しました」。

 しかし今回発売する「ロートジー」「リセ」の発売にも、ロート製薬は勝機ありと見ている理由が他にもあるという。「このロートジー、リセは、台湾の歌手や人気モデルさん達がテレビやブログなどに使用しているとファンに紹介していることもあり、発売前から既に有名で、メンソレータム社になぜ発売しないのか?との問い合わせも多いのです。リセに関しては台湾では「小さい花」と言うあだ名もついているぐらい口コミで有名になっているんです」と言う。

 台湾では目薬は日本のように目のケア品としてではなく、治療薬としての認識が高い。そのためメンソレータム台湾社は、新VロートEXなどを毎日使える疲れ目に効果のある目薬としてアプローチしてきたという。今後は ロートジーやリセを発売することにより更に認識を打破し、このアイケア市場の拡大に力を注ぎ、台湾での存在感を確固たるものとしたいと考えているようだ。また、今回のロート製薬の奮闘が、日系企業全体の積極的な進出につながるかもしれない。(編集担当:宮園奈美)