太陽電池で世界最高の変換効率を達成

2013年05月08日 19:53

 シャープ<6753>は先月、太陽電池セルで世界最高変換効率となる37.9%を達成した、と発表した。

 太陽光発電や風力発電などの再生エネルギーの固定価格買取制度が2012年7月1日に開始されて以来、メガソーラの建設に様々な業種の企業が進出している。一般家庭でも太陽光発電システムの設置件数は急速に増えている。太陽光発電システムの発電を担う太陽電池の生産量は年々右肩上がりの伸びを見せ、発電効率などの技術革新も加速度的に進んでいる。

 太陽光発電システムとは、絶え間なく地球に降り注ぐ太陽光の持つエネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電方式だ。化石燃料のように枯渇する心配もなく、地球温暖化のCO2も出さず、設置しておくだけで発電するので管理も容易といいことずくめだが、他の発電方式と異なるのは曇りや雨など天候条件によって発電量が左右され、太陽光が降り注がない夜は全く発電しないことだ。

 住宅用太陽電池は半導体であるシリコンを利用しており、単結晶シリコンを使った太陽電池のモジュール変換効率は約20%である。太陽光発電システムは一般の住宅の屋根には太陽電池パネルが数十枚設置されており、このパネルをモジュールと呼ぶ。モジュールは縦横1メートル前後で厚さは数センチの大きさ、このモジュールの中には10センチ角で厚さ数ミリの板が数十枚並んでおり、この板をセルと呼ぶ。このセルが太陽電池の本体となる。

 シリコン太陽電池は太陽光のエネルギーをすべて電気エネルギーに変換できない。太陽光には紫外線、可視光、赤外線などいろいろな波長の光があり、太陽電池が吸収できる波長は特定の波長域だけで、また太陽電池の表面で反射して損失する光もある。受け取った太陽光エネルギーの何%を電気エネルギーに変換したかを表すのが変換効率で、組み立てるための構成材料やセル間での損失によりモジュールになるとセルの状態から数%変換効率が落ちる。シリコン太陽電池の理論的な限度は30%とされている。

 シリコンを材料として使う以外に、化合物太陽電池や有機物を使う有機薄膜太陽電池、有機色素増感太陽電池があるが、今現在は発電効率や製造コストからシリコンが使われている。

 シャープが発表した太陽電池セルは化合物3接合型太陽電池で、インジウム、ガリウム、リン、ヒ素のなかの2~3元素から形成される化合物を3層に重ねることで太陽光の持つ波長域を広く取り入れ、セルの変換効率を上げている。市場に出回っている太陽電池の中では最も高い変換効率だ。

 日本の全発電量に占める太陽光発電の割合は1%にも満たない。無公害で無尽蔵にある太陽エネルギーを利用する発電量の割合の増加に十分貢献するシャープの3接合型太陽電池が、量産性とコスト問題をクリアにし市場に早く登場することを期待したい。(編集担当:西山喜代司)