2012年、日本の空の話題を独占した日本初の国産LCC。
日本人には馴染みの薄い格安航空とあって、就航前は安全面を懸念する声も多かったが、現在のところ、事故などのケガ人が出るような大きなトラブルは起こっていない。就航間もない昨年秋に、ジェットスターが整備面での不備に対し国交省から厳重注意を受けているが、就航直後の機材の急速な増加も原因のひとつと見られ、改善が進められている。
二年目を迎えた13年3月の利用率は、ピーチが約90パーセント、エアアジアが約80パーセントと発表されており、この2社はLCCが安定的に利益を出すために必要とされる80パーセントの利用率をクリアしていることから、出だしは概ね順調と見ていいだろう。
そんなLCCと空の話題を二分しているのが、次世代航空機として期待されているボーイング787ドリームライナー。ただし、こちらは大きな期待とは裏腹に、不名誉な話題が相次いだ。
ボーイング787ドリームライナーは、米ボーイング社がボーイング757、767および777の一部の後継機として世に送り出した、ワイドボディの次世代中型ジェット旅客機だ。速度よりも効率を重視して開発された機体だけあって、中型機としては航続距離が長く、燃費も向上することとに成功している。
この機体を導入することによって、これまで中型機では距離的に難しく、かといって大型機では需要や採算の面で断念せざるを得なかったような航路も、積極的に開拓できると期待された。
ところが今年1月8日、米・ボストンのローガン国際空港で駐機中の日航籍の787機体の内部から出火したのを皮切りに、翌9日には同空港で、同じく地上走行中だった日航機の主翼から燃料漏れが発覚、さらに同日、今度は羽田発山口宇部行きの全日空機でブレーキに不具合。追い討ちをかけるように、11日にも2件、13日、16日と、わずか8日間の間に7件もの重大なトラブルに見舞われ、運航が停止となったのだ。
日本の運輸安全委員会とアメリカの国家運輸安全委員会による調査では、リチウムイオン電池の内部に過剰な電気が流れてしまうことで熱暴走という現象が起こり、温度の上昇が制御できなくなることがトラブルの原因と考えられているものの、そのメカニズム自体は未だ解明されていない。
ところが、米連邦航空局はボーイング社がバッテリーの耐熱性強化など約80項目に上る改善案を提案したことにより、3月にはその改善したバッテリーを載せた機体の試験飛行を認め、「乗客の安全は確保できる」と判断し、4月に運行再開の許可を出した。これを受け、米ユナイテッド航空は5月20日、ボーイング787の営業運航を約4カ月ぶりに再開させ、日本航空株式会社及び全日本空輸も、6月1日より順次運航を再開することを発表している。
また、これに対抗するかのように、欧州航空機大手エアバス社がフランス南西部トゥールーズの組み立て工場で、ボーイング787のライバル機と目される同社の次世代機「A350」をお披露目している。
LCC、ボーイング787シリーズ、エアバスA350シリーズがしのぎを削れば、新しい航路も拡張され、世界はもっと旅しやすくなることだろう。ボーイング787の安全面での不安は未だ拭いきれないものの、強力なライバルの登場を目前に控えた今、これ以上のトラブルは787の存続だけでなく、ボーイング社自体の信頼問題にも大きく関わってくる。また、同機体を導入している航空会社も同様だ。
そういう意味でも、より細心の注意と整備が行われ、これ以上の大きなトラブルが起こることはなく、安全とコストダウンは相容れるものであることが証明されることを信じたい。(編集担当:藤原伊織)