湘南のブランド力健在、地価上昇のエリアに注目

2013年05月26日 18:36

 リーマンショック以降、東日本大震災の影響なども重なり、上昇の兆しが見えなかった地価が、いよいよその下落傾向から抜け出す兆候が表れ始めた。

 国土交通省が毎年3月下旬に公示する地価だが、今年の3月21日に発表された同データを見ると、5年連続で前年割れがあったものの、1.8%(全ての用地)という減少幅に収まり、3年連続でその幅が縮小したことが明らかになった。内訳でいうと、住宅地は1.6%減、商業地が2.1%減だった。また、エリアで見ると、東京・大阪・名古屋の3大都市圏はいずれも1%を切っており、名古屋市の住宅地に至っては0.4%の上昇と、遂に好転するという傾向を見せた。全体的にも「底入れ」という傾向を打ち出す不動産会社も現れており、この地価データが2013年1月1日現在ということを考えれば、さらに上昇傾向を見せるエリアが出現している可能性は非常に高い。

 ここで注目したいのが、ブランド力が高く、その人気は永遠とも言われた神奈川県の湘南エリアだ。

 まさかの津波被害に対する懸念から、昨年まで下落幅が拡大してしまったが、震災での同被害はこのエリアのブランド力を打ち崩すほど、ショッキングな出来事だった。だが、現在、地価下落の下げ止まり傾向を受け、このエリアが急速に回復していると言われているのだ。

 湘南エリアを中心に展開する地元の不動産会社「住宅セレクション」の林氏は「震災直後は正直、地価は下落傾向にありましたが、1年後にはかなり戻っていました。現在はアベノミクスの効果もあってか、上昇傾向にあります」と語っており、物件も不足気味だという。

 これを裏付けるように、住宅メーカーもこのエリアに注目している。

 住宅メーカー中堅の「アキュラホーム」は9年前から神奈川エリアの拠点として、横浜支店を地域密着型の営業スタイルで構築してきた。しかし、富裕層の鎌倉エリアをはじめ、沿岸地域の人気スポットである湘南地域などの神奈川県西エリアの特性を細かくカバーするには、横浜だけでは不十分であるとし、この地域に密着した営業スタイルを築き上げるため、湘南支店を5月から開設した。同支店の広川支店長は「このエリアを住まいとして選択する方たちは都心近郊の方に比べ、通勤の利便性よりも建物そのものにこだわりが強く、注文住宅の需要は高い傾向にあります。地価も戻りつつあり、元々ブランド力のある湘南エリアはこれから激戦区になる可能性が高い」と熱く語った。また、「太陽光発電など、エコ住宅への関心も高い」(同支店長)としており、地域特性に最新のエコ住宅をミックスさせた展開も需要が高いとの見方も示している。

 消費税増税前の駆け込み需要などもあり、ますます住宅市場は活況に沸く可能性が高いが、景気回復を身近に感じさせる業界であることからも、一過性の上昇傾向だけではない、地域のブランド力を誇示することで、“復活”を感じることも、実は重要ではないだろうか。(編集担当:加藤隆文)