川崎重工、バイオエタノールの新たな製造技術を確立

2013年06月04日 19:40

 バイオエタノールとは、バイオマス(トウモロコシ、サトウキビ等)から作られるエタノールのこと。これは枯渇しない「再生可能資源」として期待されているものである。しかし、バイオエタノール向け作物へのバイオマス(トウモロコシ、サトウキビ等)の転作により収穫量が減少し、それらを原材料とする食料品の価格が高騰するといった問題を孕んでいる。

 今回、川崎重工<7012>が、通常利用されることのない非食用の稲わら等のソフトセルロースから、低コストでバイオエタノールを製造する技術を確立したことは、バイオエタノールの新たなる可能性のドアを開いたといっても過言ではない。これは農林水産省の公募事業「ソフトセルロース利活用プロジェクト」において、川崎重工が取り組んできたもの。同社は2008年度から12年度の5年間にわたり、秋田県の全面的な支援のもとで、秋田県農業公社とともに行ってきた。今回の実証試験では、稲わらの糖化工程において同社の新技術「熱水式バイオエタノール製造技術」を採用している。従来の技術では、糖化工程に硫酸や酵素を使用する必要があり高コストとなる問題があったのだが、同社の技術は熱水のみで糖化処理を行うことができるため、環境性・経済性に優れているという。また、熱水の条件を変更することによって、稲わら以外のソフトセルロースの糖化処理も可能である。

 同社は、09年11月、秋田県潟上市に日産200リットルの生産能力を持つ製造実証プラントを設計・建設し、10年10月には秋田県の大潟村ソーラースポーツラインで、本プラントで製造したバイオエタノールを使用した自動車の走行実証試験に成功した。その後も、稲わらの前処理、糖化、発酵、蒸留および無水化まで一貫した実証プラントを連続稼動させ、JISに適合したバイオエタノールを安定して製造可能であることを確認し、商業規模で1リットルあたり40円の製造コストを実現するバイオエタノールの製造技術を確立した。

 化石燃料を代替するクリーンエネルギーとして注目されるバイオエタノールは、穀物やでんぷんなど食用バイオマスから製造する技術が先行して普及しているが、世界的な食糧不足が懸念される現在、稲わらなどの非食用バイオマスからバイオエタノールを製造する技術の確立は福音となるだろう。(編集担当:久保田雄城)