毛髪についての悩みというのは、ある種の人々にとっては深刻な問題である。また、医療機関で治療を受ける人は若い世代を中心に増えているといわれている。しかしながら、テクノロジーの輝かしい進歩は、特に脱毛症や薄毛で悩む人々にとって大きな希望を呼び起こすものである。
資生堂<4911>はカナダのバイオベンチャー企業・レプリセル社と技術提携し毛髪再生医療の本格研究に着手すると発表した。資生堂は、レプリセル社の「毛髪再生医療技術」導入に関し、日本を含むアジア全域を対象とした技術提携契約について同社と基本合意した。今後、資生堂はレプリセル社の毛髪再生医療技術と同社の技術を組み合わせ、専門医とも連携することで、脱毛症や薄毛に悩む人々に美容と医療を融合した安全で有効な毛髪再生医療の事業化を5 年をめどにめざすとしている。
今回、同社が導入するレプリセル社の技術は10年以上におよぶ基礎研究や臨床研究を経て、安全性が担保された世界最先端の毛髪再生・特許技術。患者(脱毛症や薄毛に悩む人々)の頭皮から採取した特定の細胞を培養した後、脱毛部位に移植(注入)、脱毛部位の損傷した毛包を再活性化させ脱毛部位の健康な毛髪の成長を促す「自家細胞移植技術」といわれるものだ。この技術の特徴としては、植毛のように広範な頭皮の切除は不要なため、外科施術における身体的負担が小さいこと。患者自身の細胞を移植するため、リアクション(移植後の拒絶反応など)のリスクが小さいこと。育毛料と比べ、一度の施術で効果の持続が期待できて男女問わず応用が期待できることなどである。
脱毛症や薄毛関連の市場は、植毛やかつら、育毛サポート、育毛料(医薬品、医薬部外品)など、国内だけでも2000 億円程度の市場規模にのぼると推計されている。
また、近年では医療機関において、男性ホルモン抑制効果がある経口治療薬が実用化されているほか、毛髪細胞に対する成長因子の頭皮への注入など新しい技術開発も試みられているが、女性はこの経口治療薬が適用できないといった問題も抱えている。
現在、脱毛症や薄毛で悩んでいなくともこの毛髪再生医療が事業化される5年後もそうとは限らない。そんなわけで、このような毛髪再生医療技術は誰にとっても注意を払うべき事柄なのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)