古代に動植物の死骸から発生したガスや液体が泥とともに堆積してできた頁岩の層に閉じ込められている。微細な層の隙間から採掘したガスをシェール・ガスといい、オイルをシェール・オイル、またはタイト・オイルという。このガスやオイルが移動し砂層に貯留し、貯留したところまで井戸を掘って地上に自噴させて採取したガスやオイルは在来型天然ガスや石油(原油)になる。
シェール・ガスを採掘する頁岩層は地下2~3キロメートルにあり、垂直に掘り進めた後、地層に沿って水平に掘削し、水や砂、薬剤などを混合した液体を500~1000気圧の強い圧力で注入し、頁岩に人工的に割れ目を作って回収したガスがシェール・ガスで液体はシェール・オイルになる。この方法を「水圧破砕法(フラッキング)」という。頁岩層中にガスやオイルが存在していることは1990年代には分かっていたが、2000年代になって採算がとれる効率のよい採取法が確立された。
2月18日に発表された日本政策投資銀行の調査レポート「シェール・ガス革命の見方(産業界への影響と日本への示唆)」をもとにまとめてみた。シェール・ガスの生産により米国では天然ガスの輸入量は減少し、2000年における米国の全輸入金額に占める天然ガスの割合1.0%だったが2011年には0.6%まで減少した。
シェール・ガスの生産が拡大し、その恩恵に沸く米国だが、日本への影響について調査レポートは分野別に述べているので、これを要約する。シェール・ガスの採掘時に使われる鋼管はガス漏れのほとんどないシームレス鋼管に日本の企業は関連する米国の子会社、または企業への投資、買収などを通じて参画している。 他に、掘削現場では水処理施設、頁岩層に高圧で注入する薬剤などのメーカが参画できるチャンスがある。
また増産されるシェール・ガスを米国国内各地に供給するため、ガスパイプラインが延長される。このためのライン用パイプとパイプ敷設節建機の受注が見込まれる。シェール・ガスで天然ガスの価格が安くなることから天然ガス自動車が増えることも予想される。天然ガス自動車に積載する圧縮天然ガスを充てんする高圧タンクは炭素繊維による強化プラスチック容器が使われており、日本が得意とする炭素繊維を売り込むことができる。余剰のシェール・ガスを輸出するにはガスを液化天然ガスにしタンカーで輸送する。天然ガスを液化するための液化設備、タンカーなどの発注が期待できる。
米国のシェール・ガス価格は2012年1月に100万BTU(英国熱量単位)当たり3.21ドルとなっているが、最近は4~5ドルと価格は上昇している。輸出するためにガスを液化し、タンカーで輸送しなければならず、その費用は6ドルで合計10から11ドルとなる。2013年5月時点で在来型の天然ガスは15ドルで購入されており、15~20%ほどのコストダウンになり、電気料金が低減されることが期待される。
しかし、需要供給のバランスから輸出が増えればおそらく価格は上昇するであろうと筆者は考える。シェール・ガスは生産拡大されているが、その価格は在来型天然ガスより安いとは必ずしも保証されない。5月17日、米エネルギー省はシェール・ガスの対日輸出を許可し、2017年からシェール・ガスが日本に入ってくる。日本の天然ガスはカタールなどの中東から大量に購入しており、ロシアやカナダ、オーストラリアからの天然ガス輸入の話も持ち上がっている。資源を持たぬ日本にとっては天然ガス調達先の多様化こそがエネルギー安全保障の上の眼目となるのではないだろうか。(編集担当:西山喜代司)