未来の車、超小型モビリティが創る未来の街

2013年06月11日 17:42

 2012年に国土交通省が「超小型モビリティ導入に向けたガイドライン」を公表したことで、日本でもようやく導入に向けて本格的に動きはじめた、超小型モビリティ。自動車メーカー各社はすでに、それに先立つ2011年に開催された東京モーターショーあたりから積極的な動きをみせており、量産に向けて着々と研究開発を進めている。
 
例えば、ニッサン<7201>の「ニューモビリティコンセプト」や、ホンダ<7267>の「マイクロコミュータープロトタイプ」、スズキ<7269>の「Q-CONCEPT」、ダイハツ<7262>の「PICO」、トヨタ「Camatte」などが、超小型モビリティの車両区分に該当する。

 すでに実験走行段階に入っているものも多く、ホンダも6月4日、同社の開発している超小型モビリティ「マイクロコミュータープロトタイプ・ベータ」の社会実験を行うためのMOU(了解覚書)を熊本県および沖縄県宮古島市と締結したと発表した。

 マイクロコミュータープロトタイプベータは、国土交通省が進める超小型モビリティの車両区分だけでなく、重量400キログラム以下、出力15キロワット以下に制限された欧州の二輪カテゴリー、「欧州L7カテゴリー」までも視野に入れた超小型EVだ。

 日本国内のみならず、欧州市場を開発段階から視野に入れていることからも、ホンダの本気が窺える。しかしながら、その陰には世界を視野に入れざるを得ない事情も垣間見える。なぜなら、超小型モビリティは、日本の自動車メーカーにとっては諸刃の剣でもあるからだ。車離れの進みつつある若年代層などの新規顧客を掘り起こす可能性を期待されている一方で、いくつかの不安要素も抱えているのだ。

 不安要素としてはまず、価格面での折り合いが難しいことがある。

 超小型モビリティの価格設定は軽自動車よりも安い50~70万円程度になるとみられているが、軽自動車ほどの需要が見込めないと、生産コストはかなり高くなってしまう。

 しかし、消費者にとっては、原付よりも利用範囲は広がるものの、値段が高く、小回りも利かない、また軽自動車よりも安価ではあるけれど、荷物や乗車定員の面で利用範囲が限られてしまうので、帯に短したすきに長しの感がある。成熟した日本の車社会に素直に受け入れられて定着し、軽自動車並みの普及が望めるかといえば、現状のままでは厳しいと考えざるを得ない。

 そこで、ホンダでは海外対応だけでなく、今秋から順次実施を予定している前述の社会実験において、高齢者層の日常的な近距離移動の支援や、通勤や業務目的のカーシェアリング、子育て支援の一環といった、さまざまな用途や可能性を具体的に検証するとともに、各自治体と共にインフラを含めた街づくりについても検証していく予定だという。

 例えば、宮古島市では、離島での街づくりや環境事業と連携した超小型EVによるCO2排出量低減効果を検証する予定だ。さらに観光地における環境対策として、再生可能エネルギーで超小型EVを運用するCO2フリー化についても、東芝<6502>と共同で検討を進めていくとしている。

 原付や軽自動車ではなく、あえてそれを選択する具体的なメリットが明確になれば、超小型モビリティは自動車大国・日本の本当の意味での次世代カーとなりえるかもしれない。そのためには、技術力はもちろん、未来の街を創造するほどのメーカーの提案力が必要になるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)