近年、セットにおける通信量の増加と配線レス化に伴い、無線LAN市場が急速に拡大している。総務省の発表によると、公衆無線LANサービスの国内市場規模は、14年度末には09年度比で約5倍にまで拡大されるとみられている。さらには、無線LAN対応モバイル情報端末は09年度の1161万台から、13年度には3,415万台になると予測されている。
無線LANはスマートフォンやノートPC、タブレットといったポータブル機器をはじめ、最近ではテレビやエアコン、プリンタなど家電製品やヘルスケア機器にも無線LAN対応のものが出はじめている。前出の総務省調査でも、約50%もの人が家庭内で無線LANを利用している又は利用することに前向きであると報告されていることからも、今後も幅広い範囲で搭載製品が増えていくことが予測される。また、家庭内やオフィスだけでなく、産業機器や工場・ビル内を管理するBEMSの一環としても、配線レスで管理できることを利点として無線LANの導入が検討されはじめている。
急速に拡大する市場に対し、各社続々と対応製品を投入しているが、中でも今回、ローム株式会社<6963>が発表したフラッシュメモリ内蔵の無線LANモジュール「BP3599」は、導入のしやすさで他社製品を圧倒しており、大きな注目を集めている。
普及の進む無線LAN製品だが、導入するためには一般的に、無線LAN規格準拠処理の組み込みや、アンテナ設計、さらには電波法の認証など、開発に膨大なコストと時間が必要となる。
また、さまざまなサポートを必要とすることや、部品の大量購入が求められるなど、導入を検討する際には、いくつかの大きな障壁があった。
ロームでは、これらの課題に早くから着目し、無線LAN通信を構築する上で必要な機能をすべてモジュール側に内蔵した製品「BP3591」を2012年にリリース、1個から買えて、簡単に導入できる点が好評を得ているようだ。「BP3591」は国際標準規格「IEEE802.11b/g/n/i」に準拠、チップアンテナを内蔵し、日本とアメリカの電波法認証取得済みのため、簡単に無線機能を搭載できる無線LANモジュールとなっている。
今回発表された「BP3599」は、この「BP3591」をさらに簡単に導入したいという声に応えたもので、「BP3591」の機能に加えて、少量での調達が難しいとされるフラッシュメモリを内蔵しており、そのフラッシュメモリには、TCP/IPプロトコルスタック内蔵の無線LANファームウェアが既に書き込まれている。セットに組み込むだけで、すぐに無線LAN通信を可能にできる、まさにオールインワンと言える無線LANモジュールである。
メーカー各社ともに性能はもちろんのこと、開発や製造に掛かる負荷をどれだけ軽減できるかが重要な選択の条件となる。オールインワンで簡単導入できるうえに、一個から購入できるロームの無線LANモジュールは非常に魅力的な製品であり、今後の無線LAN市場の拡大に拍車を掛けるようなことになるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)