「CP+」から見える、コンデジの新たな可能性

2013年02月09日 09:06

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アジア最大級のカメラ機器総合展示会「CP+ 2013」では、各メーカーから発表されたコンパクトデジタルカメラの最新機種が注目を集めていた。(パシフィコ横浜にて撮影)

 横浜市のパシフィコ横浜で開催されていた、アジア最大級のカメラ機器総合展示会

 「CP+ 2013」は、期待されていた最新一眼レフモデルの登場はなく、少しインパクトに欠けるものであったが、来場者は4日間を通して62,597人を集め、盛況のうちに閉幕した。

 まず、毎回注目度の高いキヤノン のブースでは、噂されていた人気のミドルシップ一眼レフの後継機や、新たなEFレンズの登場はなかったものの、4月下旬発売予定のコンパクトカメラ「PowerShot N」の展示プースが賑わいを見せていた。この「PowerShot N」は、何と言っても、その斬新なデザインが最大の特徴といえる。これまでのコンパクトカメラの常識を覆すほぼ正方形のユニークなデザインに加え、手のひらに収まるほどのサイズ、重量も200gを切る約195gと超コンパクト化に成功している。背面の液晶部分は90度まで可動するのでアングルにも自由度が加わりそうだ。さらに面白いのは、1回の撮影で6種類の写真を撮影できるクリエイティブショットも搭載されているところ。オリジナル写真のほかに、画像のシーンを解析し、カラーを変えたり、モノクロやセピアといったフィルタを適用したり、まったく異なる5種類の写真を瞬時に仕上げてくれるのだ。さらに、Wi-Fi機能も内蔵されているので、撮った写真や動画を直接TwitterやFacebook、YouTubeなどにアップロードすることも可能だ。事前に登録したスマートフォンとWi-Fi接続で画像を共有できる「ワンタッチスマホボタン」も用意されており、スマホとの連携もスムーズとなっている。

 一方、昨年「D800」「D4」などを発表し話題を独占したニコン も、前回のようなインパクトはなかったが、コンパクトデジタルカメラの新ラインナップをアピールしていた。中でも「COOLPIX S9500」は光学22倍ズームレンズ、GPS、無線LANを内蔵しながらコンパクトに仕上げた製品で、背面には3型有機ELディスプレイを搭載している。コンパクトカメラコーナーでは、S9500の姉妹機として新たにCOOLPIXのラインアップに加わる5機種も紹介されていた他、レンズ交換式のミラーレスカメラ「Nikon 1」シリーズの注目の新機種「Nikon 1 J3」「Nikon 1 S1」も展示されていた。

 そして、この2大メーカーに負けじと多くの人を集めていたのがオリンパス のブースだ。こちらは年内に発売が予定されているという「OLYMPUS PEN E-P3」後継機の展示が目玉であったが、コンパクトデジカメSTYLUSシリーズの最新製品「OLYMPUS STYLUS XZ-10」にも注目が集まった。「XZ-10」は、有効1200万画素の高速な裏面照射CMOSセンサーとPENシリーズにも搭載されている「TruePic V」を組み合わせた最新技術「iHS」テクノロジーを採用することにより、高感度、低ノイズ、高速AF性能を進化させている。さらに興味深いのは、連写された複数枚の写真が1枚の写真のようにレイアウトされる「PHOTO STORY」という新たな機能が搭載されたところだ。「スタンダード」「スピード」「ズームイン/アウト」「ファンフレーム」の4テーマが用意されており、視点の違ったフレームをコラージュすることでまるで物語の1ページのようなドラマティックな写真表現を可能にしてくれる。

 このように、今回のCP+は、どちらかといえばコンパクトカメラが主役といった印象を受けた。スマートフォンの躍進により、存在感が薄れつつあったコンパクトデジタルカメラだが、メーカーとしては、利益率は低いもののターゲット層が広いこの分野は、新規ユーザー獲得のためにも見過ごすことができないところだろう。昨年は、スマートフォンとの差別化を図ろうと画質面や処理スピードなどに重点を置いて製品が多かったが、今年発売される新機種は、コンパクトさや操作性、さらにはファッション性といったところにもこだわりが感じられるものが多く、デザイン性を重視する若い女性や、デジタル操作に慣れていない高齢者など、ライトユーザー層へのアプローチが見受けられた。

 とは言え、国内で年に一度開催されるカメラの祭典に革新的な大物の登場がなかったことで、期待していたカメラファンや業界関係者の中には、すこし肩すかしを喰ったように感じている人も少なくないのではないだろうか。(編集担当:北尾準)