コストはかかるが、需要も高い植物工場産作物

2013年07月08日 19:51

 建物内などの閉鎖的な環境、もしくは巨大ビニールハウスなどを使い太陽光を利用しながらも半閉鎖的な環境で作物を栽培する植物工場。植物工場で栽培された作物は、東日本大震災以降、食の安全を求める消費者からも注目されるようになった。植物工場は、現在に至るまで、さまざまな企業が投資・経営をしてきたが、撤退や廃業までの期間も短かった。

 植物工場の売りといえば、天候に左右されにくく、大気汚染や害虫などの被害も少ないことである。とはいえ、太陽光の代わりに人工光を使えばエネルギーコストが高くつき、ひとたび病気や害虫が発生すれば、瞬時に工場内に広まり、処理をするのにまたコストがかかる。内部環境を管理するのは、簡単にはいかない。ただ、そのような中でも、着実に出荷数を伸ばし、栽培面積を広げる企業もある。

 日清紡ホールディングス株式会社<3105>は、2011年に徳島事業所(徳島県徳島市)の完全制御型植物工場内で一季成りいちご1万株の栽培に成功。「あぽろべりー(R)」と名付け出荷した。また、翌12年には栽培株数を7万株に増やし、さらに13年に入り藤枝事業所(静岡県藤枝市)に10万株の栽培設備を導入。今秋から出荷を開始する予定である。全国のいちご出荷量は200万トンから250万トンといわれているが、同社に取材したところ「あぽろべりー(R)」の出荷量は、来年以降、17万トンほどを見込んでいる。通常、一季成りいちごの旬は、冬から春にかけてであるが、それを植物工場で栽培することにより、いつでも甘く美味しいいちごを出荷することができる。このことから「あぽろべりー(R)」の主な出荷先は高級洋菓子店であるという。洋菓子店では、年間を通じて、いつも同じ味の商品を提供するために、同じ品種のいちごを年間を通じて仕入れることができるのは、大きなメリットであるからだ。

 最近は、地産地消ならぬ、店産店消という言葉が広がりをみせている。例えば、レストランなどの店舗内で葉菜類を栽培し、提供するというスタイルだ。植物工場は今や身近なものになりつつある。国内の6次産業化なども進む中で、今後、売上げを伸ばすのは、生産者はもとより植物工場のコンテナやドームを受注製造している会社ではないだろうか。(編集担当:中村小麦)