【日経平均】選挙結果を為替と中国が蹴散らしても68円高

2013年07月22日 20:16

 前週末19日のNYダウは4ドル安。マイクロソフトとグーグルの決算が市場予測を下回ったが、GEの決算が悪くなかったのが支えだった。モスクワで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議は共同声明で財政健全化より経済成長を重視する姿勢を示し、新興国経済への悪影響が懸念されるアメリカの量的緩和の出口戦略に慎重さを求めた。

 21日投票の参議院選挙の開票結果は事前の予測通り「連立与党」は76議席を取って圧勝、ねじれ解消、安定多数確保という結果だったが、自民党だけで言えば単独過半数を実現できる72議席にも70議席にも届かない65議席で、選挙制度が異なることもあり昨年12月の総選挙や6月の都議選のような「自民一人勝ち」にはならず微妙な未達成感が残った。一方では改憲勢力の3党を合わせても発議条件の3分の2に20議席及ばない結果だったので、「安倍内閣は憲法改正を棚上げして経済政策に優先的に取り組む」という見方もできる。22日朝方の為替レートは、ドル円は100円台半ば、ユーロ円は132円前後で、ドル円は前週末とほぼ同じ水準だった。

 前週末に25日移動平均線が75日線を上に突き抜ける「ゴールデンクロス」の吉兆が出現。「政権基盤安定化」を受けて海外からの資金流入も期待された日経平均は180.11円高の14770.02円の大幅高で始まるが、急落して午前9時11分には瞬間マイナスに。東京外為市場の大量の円買いドル売りでドル円が100円を割ったためで、円高が選挙結果など簡単に蹴散らすのが東京市場の現実。それは「中国」も同じで、10時30分から週明けの上海総合指数が4日続落で始まり、日経平均もズルズル下落して14600円を割り込んで再びマイナスになり、まさに「危険な時間帯」。日経平均の前引けはマイナスだった。

 一段安で始まった後場は14500円台のマイナス圏からなかなか浮上できないが、午後2時前にドル円が100円に乗せたので日経平均もプラスになり14600円台にタッチ。上海、香港のマイナスが重しで伸び悩むものの終値は68.13円高の14658.04円。平成になってから8回の参議院選挙で繰り返された「自民党が議席を増やすと翌日の日経平均は下落し、議席を減らすと上昇する」というジンクスは9回目にしてついに破られた。TOPIXは+4.55の1216.53。売買高は24億株、売買代金は2兆435億円でやや低調だった。

 値上がり銘柄は値下がり銘柄508の2倍を超える1129あり、東証1部33業種別騰落率のプラスは24業種。その上位は海運、その他製品、不動産、精密機器、サービス、輸送用機器など。マイナスの業種はパルプ・紙、機械、空運、ゴム製品、電気・ガス、石油・石炭などだった。

 日経平均プラス寄与度は、12円のファーストリテイリング<9983>の次が7円のソフトバンク<9984>。アメリカのユニバーサルミュージックに買収提案を行ったという材料があった。一方、4~6月期は営業赤字転落というネガティブな業績観測記事が出た東京エレクトロン<8035>は170円安で日経平均を6円押し下げマイナス寄与度1位。この日はハイテク系主力株が軟調で、クレディスイス証券が投資判断を引き下げた安川電機<6506>、京セラ<6971>、TDK<6762>、アドバンテスト<6857>、太陽誘電<6976>がマイナス寄与度10位以内に入っていた。半導体製造関連では大日本スクリーン<7735>も17円安と悪く、村田製作所<6981>は240円安だった。

 銀行、証券は値上がり率5位の岩井コスモHD<8707>のような例外を除けば軒並み安。235円安で値下がり率6位のジャフコ<8595>は19日の決算発表で純利益7.5倍でも通期業績見通しを出さず心証を悪くした。自動車はおおむね好調で、トヨタ<7203>は20円高、富士重工<7270>は49円高、マツダ<7261>は7円高、三菱自動車<7211>は4円高。HV車の新型「フィット」が1リットル36.4キロで燃費世界一の座についたホンダ<7267>は45円高だった。

 HPと提携し高性能サーバーを開発・生産すると報じられたNEC<6701>は10円高で売買高9位。ソニー<6758>は31円高。パナソニック<6752>はロシアで白物家電販売強化という材料があり2円高。シャープ<6753>の掃除ロボット向け小型モーターを開発した日本電産<6594>は30円高で23日に決算を発表する。シャープは17円安。

 日本が南鳥島沖のレアアースの独占探査権を取得し、日本海洋掘削<1606>は300円高、三井海洋開発<6269>は80円高と買いを集める。中国政府の家庭用ゲーム機解禁の影響はなお続き、日経平均採用への期待もふくらむ任天堂<7974>は売買代金7位と買われ540円高で年初来高値を更新。ゲーム機向けソフトが主力のスクエニHD<9684>は103円高で7日続伸し値上がり率14位。コナミ<9766>も29円高になっていた。KLab<3656>は54円安で値下がり率17位。中国で実績を築いた資生堂<4911>は全額出資の子会社を設立してインドに本格進出するニュースで32円高になった。

 選挙結果は織り込み済みのようで公共投資関連はふるわなかったが、突出していたのが旧大証の錢高組<1811>で、31円高で年初来高値を更新し値上がり率3位に入った。東京電力<9501>の23円安4日続落は原発再稼働期待の材料出尽くしか。それとも脱原発を唱える山本太郎氏と共産党候補が東京選挙区で当選した影響か。原発関連では三菱重工<7011>も26円安で値下がり率14位だった。初のネット選挙で活躍したドワンゴ<3715>は値下がり率15位で、用済みか。

 政策がらみでは規制緩和期待でフルキャストHD<4848>が売買高5位、売買代金15位と買いを集め値上がり率6位。同ランキングは2位にアウトソーシング<2427>、9位にパソナG<2168>、11位にテンプHD<2181>と人材派遣関連がランクインした。オーイズミ<6428>は値上がり率8位で、同じカジノ関連の日本金銭機械<6418>、セガサミーHD<6460>も株価上昇。創業者の渡邊美樹氏が自民党から出馬し比例区で当選したワタミ<7522>は2円高だった。

 この日の主役は選挙も為替も中国もあまり影響しなかった内需系の個人消費関連。ローソン<2651>は90円高、ABCマート<2670>は25円高、スタートトゥデイ<3092>は24円高でともに年初来高値を更新。「生活救急車」で日常生活のリペア需要に応えるJBR<2453>は値上がり率4位と買われた。インドネシアに進出し合弁で卸売事業を展開するオートバックスセブン<9832>は12円高だった。厚生労働省が企業内保育所増設の規制緩和の方針を打ち出し、JPHD<2749>が40円高で値上がり率17位、サクセスHD<6065>が48円高、ピジョン<7956>が330円高と保育関連銘柄がにぎわった。(編集担当:寺尾淳)