「ジェネリック薬」普及のカギは

2013年08月15日 08:56

 医療費の増加が止まらない。厚生労働省の発表によると、2010年の国民医療費は前年に比べて約1.1兆円増加し、過去最高の37.8兆円となった。医療費の増加は9年連続だ。

 背景には高齢化が進んでいることや、それにともない薬の処方が多いガン患者が増えたことなどがある。薬価の安い「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」の普及がなかなか進まないのもそのひとつだ。

 ジェネリック医薬品とは、特許が切れた先発医薬品の有効成分を主成分として、先発医薬品以外のメーカーが作った医薬品のこと。有効性や安全性についての臨床試験を省いてよいため、価格は平均して先発品の半額ほどになる。

 アメリカやイギリス、ドイツなどでは薬全体の6割~7割がジェネリック医薬品(数量ベース)。しかし日本では、新薬の開発を行う大手製薬会社とくらべて規模の小さい後発医薬品メーカーが医師に対して十分な情報提供をできなかったことなどから、患者への浸透も進まず、普及率は25%程度にとどまる。

 厚生労働省は何とかして医療費を抑制しようと、たびたび制度の改正を行なってきた。たとえば2012年3月までは、処方箋に「後発品への変更不可」の署名欄があり、そこに医師のサインがあれば、薬剤師はすべての処方薬を先発品にしなければならなかった。

 だが同年4月からは、「後発品への変更不可」の署名欄には「個別の医薬品ごと」にサインをすることになった。つまり薬局で処方箋を見た薬剤師は、医師のサインがない薬があれば自由にジェネリックへの変更ができるようになったのである。

 これは薬剤師の裁量が劇的に大きくなったことを意味する。患者に対し、「値段の安いジェネリック医薬品にしてみませんか?」と、声をかけることが可能になった。もちろんその分、薬剤師にはアレルギーの有無の確認など患者への説明責任が求められるようになっている。

 とはいえ依然として認知度の低いジェネリック医薬品。現状では、大手製薬会社に比べて資金力、認知度の点で劣る後発品メーカーにとってあまりにも不利である。普及のためには処方箋のしくみを「先発品にしたい場合にのみ医師のサインが必要」にするなど、根本的に変えていくことが必要だろう。(編集担当:北条かや)