菅元首相、原発事故の刑事責任を否認

2013年08月18日 14:10

 14日、東京電力<9501>福島第一原発事故をめぐって、事故発生後の対応に問題があったとし、「業務上過失致傷容疑」などで告発されていた民主党の菅直人元首相が、東京地検に対して意見書を提出したことが分かった。その意見書の内容は、「過失はなかった」と告発容疑を否認するものとのこと。

 菅元首相は、東日本大震災発生の翌日、現地視察を強行したことにより、東京電力の現場担当者らの作業を妨げ、福島第一原発1号機の原子炉建屋の水素爆発を招いたとして、業務上過失傷害などの容疑で告発されていた。関係者によれば14日の午後、菅元首相は、「対応に問題はなかった。むしろ東京電力側に作業を積極的に進めさせた」という旨の、刑事責任を否認する意見書を弁護士を通じて東京地検に提出した。

 その意見書で菅元首相は、水蒸気を放出することで原子炉格納容器の圧力を下げる「ベント」を、3月12日未明には東京電力に対して了承していたと説明し、視察当日の直前になってその作業が遅れていることを知り、現地では早急に実施するよう指示を行ったとし、「対応に問題はなかった」と述べている。

 東京地検は菅元首相に対し任意の事情聴取を要請していたが、菅元首相は「首相の職務として行ったことであり、捜査機関に口頭で説明するのは適当ではない」とし、こうして書面にて応じた模様。また東京地検は、菅元首相と共に告発されている、当時の官房長官の枝野幸男氏と、経済産業相だった海江田万里氏に対しても事情聴取を要請している。2人も容疑を否認する姿勢のようだ。この事故に関しては、東京電力の前会長、勝俣恒久氏を含む当時の幹部たちも同様に告発されている。

 東京地検は、今回提出された意見書を精査した上で、刑事責任の有無を判断する予定だが、これまでに聴取を行った専門家らが、「津波を予測することは困難だった」との見解を示していることから、刑事責任を問うことは難しいとみられる。

 そのため東京地検は、菅元首相、枝野幸男元官房長官、海江田万里元経済産業相ら3人を、東京電力の当時の幹部たちと共に不起訴処分とする見通し。(編集担当:滝川幸平)