大手商社7社(三菱商事<8058>、三井物産<8031>、伊藤忠商事<8001>、住友商事<8053>、丸紅<8002>、豊田通商<8015>、双日<2768>)の2013年度4~6月期決算は、前年同期比の「減」が三井物産、伊藤忠商事の営業利益、豊田通商の四半期純利益、双日の売上高しかなく、1%を超える減になった理由は、三井物産は鉄鉱石価格の下落、豊田通商は段階取得に係る差益で大幅増益だった前年同期の反動減という事情で、全般的に見て非常に好調な決算になった。資源・素材部門の不調で5社が2ケタの最終減益を喫していた昨年9月の中間決算と比べると、見違えるような復調をみせている。
三菱商事の売上高は前年同期比12.5%増、営業利益は151.5%増、税引前四半期純利益は43.8%増、四半期純利益は15.3%増、通期見通しの売上高は20兆9000億円、営業利益は1950億円、税引前当期純利益は3850億円、当期純利益は4000億円で据え置き。想定為替レートはドル円95円で据え置き、年間配当も60円で据え置き。
三井物産の売上高は前年同期比11.5%増、営業利益は9.3%減、税引前四半期純利益は27.4%増、四半期純利益は20.4%増。通期見通しの売上高、営業利益、税引前当期純利益は公表せず、当期純利益は3700億円で据え置き。想定為替レートはドル円95円で据え置き。年間配当も51円で据え置き。
伊藤忠商事の売上高は前年同期比9.2%増、営業利益はごく微減、税引前四半期純利益は23.0%増、四半期純利益は9.4%増。通期見通しの売上高は14兆3000億円、営業利益は2800億円、税引前当期純利益は3000億円、当期純利益は2900億円で据え置き。想定為替レートはドル円90円で据え置き。年間配当も42円で据え置き。
住友商事の売上高は前年同期比2.8%増、営業利益は4.7%増、税引前四半期純利益は3.5%増、四半期純利益は25.4%増。通期見通しの売上高は8兆5000億円、営業利益は公表せず、税引前当期純利益は3330億円、当期純利益は2400億円で据え置き。想定為替レートはドル円90円で据え置き。年間配当も47円で据え置き。
丸紅の売上高は前年同期比17.3%増、営業利益は16.3%増、税引前四半期純利益は12.5%増、四半期純利益は17.8%増。通期見通しの売上高は13兆7000億円、営業利益は1750億円、税引前当期純利益は2800億円、当期純利益は2100億円で据え置き。想定為替レートはドル円95円で据え置き。年間配当も25円で据え置き。
豊田通商の売上高は前年同期比15.6%増、営業利益は55.3%増、経常利益は31.8%増、四半期純利益は3.9%減。通期見通しの売上高は7兆5000億円、営業利益は1550億円、経常利益は1620億円、当期純利益は710億円で据え置き。想定為替レートはドル円90円で据え置き。年間配当も46円で据え置き。
双日の売上高は前年同期比0.3%減、営業利益は24.0%増、税引前四半期純利益は42.7%増、四半期純利益は15.1%増。通期見通しの売上高は4兆2800億円、営業利益は380億円、税引前当期純利益は450億円、当期純利益は250億円で据え置き。想定為替レートはドル円95円で据え置き。年間配当も4円で据え置き。
4~6月期は中国の景気減速を受けて鉄鉱石や石炭などの資源価格の市況低迷が続き、資源・素材部門は相変わらず不調だったが、円安効果と非資源・素材部門が伸びたことで大手商社の業績は好転した。なお、丸紅と双日は4~6月期から国際会計基準に移行し、株式売却益が四半期純利益には反映されていない。
三菱商事はアジアでの自動車販売が堅調で、三井物産はエネルギー部門の配当益の増加、円安による310億円の押し上げ効果で通期の純利益見通しの進捗率が34%と7社の中で最も大きくなった。伊藤忠商事はアメリカのフルーツ大手ドールの事業の一部を買収した食料品部門や自動車などの機械部門が好調で、住友商事はアジアでの自動車金融事業が伸び、シェールガス・オイルの採掘でパイプライン需要が盛り上がる北米の鋼管事業で強みを発揮している。四半期純利益が過去最高になった丸紅は穀物大手のガビロンを買収した食料品部門や、海外での電力事業、中国での穀物販売、インフラ事業などが伸びている。豊田通商は自動車販売が引き続き好調で、双日はアジアでの肥料や合成樹脂の販売で大きな収益をあげていた。
そんな好決算を出しても4~6月期決算で全7社が通期業績見通しを据え置いた理由は、新興国、特に中国の景気減速の先行きが見えなかったことだが、8月に入って情勢が大きく変わってきた。中国での景気底打ち観測を背景に鉄鉱石も、原油や石炭などエネルギーも、銅やアルミなど非鉄金属も8月の市況は上昇をみせており、大手商社、特に三菱商事、三井物産では大きなシェアを占めている資源・素材部門で業績回復の目が出てきた。非資源・素材部門が好調な各社の業績全体にとっては「鬼に金棒」になる。
為替相場が円高に大きく戻らず、各社の非資源・素材部門の好調さがこのまま変わらないとすると、7~9月期は業績の上振れが期待でき、4~9月期中間決算は4~6月期よりもさらに明るさを増して、通期業績見通しの上方修正ラッシュが起きるかもしれない。当然、商社株もそれを先取りするように株価右肩上がりの動きが出てくるだろう。(編集担当:寺尾淳)