ヤマハ発、中期経営計画達成に向けて視界良好

2013年09月14日 20:26

 ヤマハ発動機は中間決算の場で、2013年12月期の連結営業利益が前期比で3倍、今年2月に発表した従来予想に比べ1割アップの550億円になるという見通しを発表した。連結売上高は従来予想比500億円増の1兆4,500億円に、連結純利益は前期比4.5倍の340億円に上方修正している。

 この大幅改善となる見通しを支える要素は、以下の3点だろう。

 1つ目は、先進国を中心に伸びるマリン事業。特に景気回復の追い風を受け米国市場が昨年末から好調だ。昨年、投入を開始した小型・軽量・高出力(200馬力)の船外機や、世界でも珍しい船外機を指一本で操船可能なシステムの「ヘルムマスター」を相次いで投入。「ヘルムマスター」は操船するための「部品」だが、200万円を超える価格ながらも「好調な販売状況」(同社広報部)という。国内のプレジャーボートの今年上期の出荷台数もアベノミクスの影響を受け、前年上期と比べて112%伸長と堅調だ。IMFが来年の米国経済成長率を2.7%と想定するなど、米国の景気回復には力強さが見えることから、当面、市場の好調は継続するとの見立てだ。

 2つ目は、同社最大のドル箱市場であるインドネシアの復調だ。同国は昨年6月、二輪車ローンに頭金規制を導入。購入希望者は車輌価格の20~25%を頭金として用意せざるを得なくなった。平均月収にほぼ匹敵する額の頭金を用意するのは庶民にとっては厳しい規制だ。実際、この影響で昨年の総需要は前年比88%と落ち込んだ。しかしこの上期は、頭金規制のほとんど無かった昨年比較で106%と伸長に転じたのだ。現地に定着した感のある頭金規制はもう需要を引き下げる障害ではなくなりつつあり、上期に投入したニューモデルが下期にはしっかりと貢献してくる可能性が高い。

 3つ目は、景気回復傾向にある市場に向け、ニューモデル投入を本格化していくことが挙げられる。二輪車では、先進国向けではオールニューを含む新型車を6月以降相次いで投入。また、ここ数年急拡大している米国のROV(オフロードビークル/多人数乗車の四輪バギー)市場にも新型の「VIKING」を展開する。ROV市場で同社はこれまで、他社の好調さを指をくわえて見ていたが、競争力のあるニューモデルを得て、反転攻勢に打って出る。今後5年間、ニューモデルを投入し続けていくことも発表した。

 今年度からスタートした中期計画初年度のスタートは順調。欧州市場は景気低迷による需要減少が続いているが、力強い回復を見せる日米市場や、最悪期を脱したインドネシアを筆頭とする巨大市場のアセアン、新興国などへ、ジャストミートする形でニューモデルを投入していくヤマハ発動機に期待したい。(編集担当:寺尾淳)