2014年の消費増税に伴って、自動車取得(しゅとく)税の見直しが行なわれるようだ。政府が発表した「税制改正大綱」によると、消費税率が8%に上がる2014年4月段階で地方税の「自動車取得税」を軽減し、消費税が10%になった時点(時期未定)で廃止するとしている。自動車取得税は、1968年に地方の道路整備財源として設定された目的税(地方税)だった。自動車の購入時にその価格に対して課税される税金だ。その後、消費税が導入された後も施行され続けた取得税と消費税という2重課税が、取得税廃止で解消される。
しかし、自動車関連の税金は国と地方、さらに縦割り行政のなかで複雑に絡み合っている。別項で記した、自動車取得税廃止に伴う「軽自動車税」増税論議もそのひとつである。
そんななか、2010年に総務省がぶち上げて話題となった「環境自動車税」構想が、ここにきて再浮上している。この構想を簡単にいうと、「複雑な自動車関連税の簡素化を図るために、自動車税(地方税)と自動車重量税(国税)を一本化して、地方税として『環境自動車税(地方税)』とする」とうもの。自動車取得税廃止後の地方税を担保する目的もある。
総務省の「環境自動車税に関する基本的な考え方」を見ると、自動車の排気量と二酸化炭素排出量の合計でクルマの税金を決定し税金を徴収。その税金は一般財源で軽自動車もこれに含めて検討する、としている。
総務省がPDFで公開しているこの「考え方」文書の内容は、かなり乱暴で、排気量と二酸化炭素排出量を基準とするらしいのだが、排気量はともかく、二酸化炭素排出量はJC08モード燃費で決定することになるらしい。
と、するならばエンジンを搭載しない(排気量がゼロ)日産リーフ(電気自動車)はガソリンを消費しないので『無税』ということになる。もっとも、現状で日産リーフは、エンジンを搭載していないのに「排気量1000cc未満の自動車」とされていて、年額2万9500円の自動車税となっている。つまり、総務省構想の自動車税を低く抑えるには、限りなく「電気自動車(EV)」が有利となる。次いで、長距離EV走行が可能な「プラグイン・ハイブリッド(P-HV)」車が候補となる。いわゆる「環境対応自動車」ということだ。たしかに「環境自動車税」という税金名称にふさわしいように思える。
しかしである。EVはそのクルマ自身が、二酸化炭素を排出しないだけ。充電に使う電気は、何処で何を使って発電しているのか? この問題を「環境自動車税」は、まったく考慮していない。P-HVは確かに燃費が良い。しかしながら、EVやP-HVの価格は、ふつうの自動車よりも相当に高価だ。これが何を意味するかというと、EVやP-HVは高価なレアメタル、レアアースをたくさん使い、リチウムイオン電池などの部品やクルマの生産段階で膨大なエネルギー(電気ほか)を消費しているということだ。
総務省のお役人は、どうも「エネルギー保存の法則(熱力学第一法則)」という科学の基本をご存じないようである。(編集担当:吉田恒)