【日経平均】値動き安定し下げても底堅く反発して132円高

2013年10月21日 20:24

 前週末18日のNYダウは28ドル高。S&P500は史上最高値連日更新の宇宙旅行中。政治の嵐が過ぎ去った後に待つのは「業績相場」で、ベライゾン、モルガンスタンレー、グーグルなど7~9月期決算が良かった銘柄を中心に買われ、中国の7~9月GDP成長率の上昇、量的緩和縮小開始は年を越して3月かという観測もムードを良くした。21日朝方の為替レートは、ドル円は97円台後半、ユーロ円は133円台後半で、前週末以来ドル安円高の水準は変わらない。

 取引時間前発表の9月の貿易統計は15ヵ月連続の貿易赤字だったが、恒常化して反応なし。欧米の株高を受け日経平均は62.49円高の14624.03円と14600円台に乗せて始まる。ドル円が東京外為市場で98円台に乗せて円安が進み、午前9時台は始値を起点にどんどん値を切り上げて14700円を突破したところで上昇ストップ。再び14700円を割り込み10時台は徐々に下げていくが、前場は14600円台後半の高値もみあいに終始した。

 後場は前引けと同水準で始まるが、15分ほどで下落して14650円を割り込み、始値水準まで下げる。それでも午後1時台に前引け水準に持ち直し、その後はおおむね14600円台後半の小動きで推移し、大引け前には再び買いが入り終値は132.03円高の14693.57円と14700円に接近して終了。日中値幅は103円と小さい。TOPIXは+6.84の1212.36。東証1部の売買高は17億株、売買代金は1兆4557億円で、雇用統計待ち、決算発表待ちの様子見もあり商いは盛り上がらなかった。

 値上がり銘柄数は1296で約74%を占め、値下がり銘柄数は322。東証1部33業種別騰落率は30業種が値上がりし、上位はその他金融、金属製品、不動産、パルプ・紙、情報・通信、倉庫など。下位は銀行、電気・ガス、ガラス・土石など。値下がりした3業種はゴム製品、鉱業、石油・石炭だった。

 日経平均プラス寄与度はソフトバンク<9984>とファーストリテイリング<9983>が合計+37円で突出。ソフトバンクは子会社のアリババの「パートナー制度」がNY市場からもNASDAQからも承認され上場に支障なしと報じられ200円高で、日経平均を支えた。マイナス寄与度トップは-2円の横河電機<6841>で、日経新聞の業績観測記事によると9月中間期の営業利益は「従来予想に近い数字」で、市場では「上回れない」と解釈され63円安、値下がり率5位になった。

 メガバンクにプラス銘柄なく証券も不振。しかしノンバンクはアイフル<8515>が17円高、オリコ<8585>が7円高でその他金融セクターを騰落率1位に押し上げた。自動車はトヨタ<7203>は20円高でも、富士重工<7270>18円安、日産<7201>12円安、マツダ<7261>1円安とふるわない。その中でスズキ<7269>は9月中間期で営業利益が最高益を更新する見通しと報じられ、市場予測も上回って57円高。軽は販売好調だが、取れるところから税金を取りたい官僚や政治家に目をつけられるのがつらいところ。

 電機では富士通<6702>が7円高と良くシャープ<6753>は売買高2位、売買代金8位で2円高と復調。ダイキン<6367>は120円高で年初来高値を更新した。決算発表を翌日に控えた日本電産<6594>も250円高で年初来高値更新。子会社の日本電産コパル電子<6883>は47円高で年初来高値を更新して値上がり率10位に入り、本体の好決算で永野節炸裂への期待が高まる。

 内需系が買い直され、ターゲットは成長戦略で都心ビルの容積率緩和の話題が出ている不動産。ケネディクス<4321>は31円高で売買高、売買代金3位。三井不動産<8801>は45円高、三菱地所<8802>は50円高、住友不動産<8830>は80円高だった。

 旭化成<3407>と東大医科研発ベンチャーのテラ<2191>は、がん治療のために細胞を培養・加工する装置の臨床研究を始めると報じられ旭化成は2円高、テラは150円高。古河電池<6937>は9月中間期の営業利益見通しを上方修正し54円高で値上がり率5位。ジャフコ<8595>は9月中間決算の経常利益が8.7倍に急増したのを好感され100円高で年初来高値を更新した。LIXILG<5938>は9月中間期の営業利益8割増という観測記事が出て59円高で7日続伸と好調。住宅市場が駆け込み需要で盛り上がりシステムキッチンやアルミサッシが売れている。

 新卒向け求人サービスの学情<2301>は、日経新聞が来春卒業の大学生の内定率が3%増で3年連続プラスと報じたのを好感され76円高。年初来高値を更新し値上がり率6位。だが内定増は銀行や証券が中心で、2ケタ減の化学や鉄鋼など製造業はマイナス。今はまだ「回復感なき採用回復」かもしれない。

 安川電機<6506>は今期業績見通しの純利益が前期の2.3倍と発表。東京製鐵<5423>は9月中間期決算を発表し経常利益が4期ぶりに黒字に転換し通期も上方修正したが、この2銘柄は利益の伸びが市場予測に届かなかったために安川電機は28円安で値下がり率17位、東京製鐵は37円安で値下がり率2位と売られた。期待が高かったワコム<6727>は業績下方修正が投資家を失望させ108円の大幅安で値下がり率トップになった。

 この日の主役は東証マザーズの「驚異の新人」エナリス<6079>。10月9日に上場し公開価格は280円、初値は717円だったが、この日も特別買い気配銘柄に指定され連日のストップ高で、株価は2000円台に乗り400円高で上場来高値を5日連続更新。上場以来マイナスは一度もない。終値は2199円で公開価格の7.85倍になり、大株主のジャフコの株価上昇を後押しした。電力ユーザーのコスト削減提案という他に類を見ないビジネスモデルへの投資家の関心は高く、この日は経済産業省が電力会社の持つ顧客の利用情報の新規参入業者への開示を義務付けると報じられ、電力小売新規参入の促進政策も追い風になっている。そのニュースの影響もあり東京電力<9501>は7円安になっていた。

 エナリスの売買代金は544億円で東証1部売買代金トップのソフトバンクの747億円に次ぐ規模で、305円高のコロプラ<3668>の440億円とともに東証1部で2位のトヨタの382億円をしのいだ。マザーズはこの2銘柄が売買代金の45.5%を占め、約4分の1はエナリス株の商いで占められていた。(編集担当:寺尾淳)