NYダウは21ドル高で小幅続伸し史上最高値更新。「ベテランズ・デー(復員軍人の日)」の銀行休業日で債券市場は休み。NY証券取引所は休場ではなかったが、市場参加者が少なく決算や経済指標のような材料もなく、8日と比べて売買高34.7%減の薄商いだった。12日朝方の為替レートはドル円は99円台前半、ユーロ円は133円近辺で、ユーロは前日よりも高くなっていた。
取引時間前に経済産業省が9月の第3次産業活動指数を発表し、2ヵ月ぶりに0.2ポイント低下して100.1。日経平均は20.03円高の14289.87円と小幅高で始まる。14300円台に何度もタッチしても定着しない状況が一変したのは午前9時30分すぎで、為替の円安進行に伴い先物主導で一気に上昇し14400円にタッチした。14400円前後でしばらくもみあった後、10時台に2段目の上昇で14475円まで上げ、ドル円は一時99円50銭を突破した。その後は円安が落ち着き14400円台で徐々に値を切り下げるが、11時頃に3段目の上昇で14538円まで一気に上昇し前引けも14510円で、ドル円は99円60銭に迫っていた。日経平均の14500円台は11月で初めてで、TOPIXも節目の1200台を回復した。
後場も14500円台をしっかりキープして高値もみあい。ドル円は99円台後半を維持し、日経平均は午後2時20分に14573円の高値をつけた後も安定した動きで、最後はTOPIXとともに高値引けで318.84円高の14588.68円。日中値幅は310円もあった。TOPIXは+19.76の1205.41で終値も1200台。売買高25億株、売買代金2兆1049億円で、資金流入で商いがにぎわい久々に2兆円を超えた。
値上がり銘柄が1477と全体の84%もある掛け値なしの全面高で業種別騰落率は全33業種がプラス。上位はその他金融、倉庫、保険、不動産、金属製品、情報・通信など。下位は建設、ゴム、石油・石炭、水産・農林、精密機器、医薬品などだった。
日経平均225種も値上がり209に対し値下がりは11だけ。プラス寄与度上位は「御三家」の間に290円高で13年ぶり高値を記録したKDDI<9433>が2位に割って入り、4銘柄合計で寄与度+111円。ソフトバンク<9984>は一時マイナスだったが終値は160円高。-5円でマイナス寄与度トップは太陽誘電<6976>で、通期業績見通しを下方修正し、野村證券が目標株価を引き下げ138円の大幅安で値下がり率2位になっていた。
大引け後に決算を控えた三井住友FG<8316>の95円高を筆頭に三菱UFJ<8306>13円高、みずほ<8411>3円高とメガバンクは好調。新生銀行<8303>は三菱UFJモルガンスタンレー証券が投資判断を引き上げ4円高だった。地銀は横浜銀行<8332>、ふくおかFG<8354>が9月中間期の最終利益が2割増など主要10行トータルの最終利益が21%増と報じられた。前日に決算を発表した千葉銀行<8331>は41円高、ふくおかFGは11円高、静岡銀行<8355>は23円高、京都銀行<8369>は25円高で、投資信託の販売手数料が3割増の横浜銀行は12円高だった。各行とも手数料収入の伸びが収益を押し上げたが、金融緩和で期待される中小企業融資の拡大はまだ進んでいない。
前日発表の10月の中国の新車販売台数は20.3%増の193万2600台。今年は初の2000万台突破が確実で、世界の新車の4分の1が中国で販売される計算。中国依存度が大きい日産<7201>は「スカイライン」初のHV車を来年2月に発売するニュースもあり9円高。ホンダ<7269>は65円高、トヨタ<7203>は70円高。ソニー<6758>59円高、シャープ<6753>4円高、日立<6501>15円高と電機も揃って株価を上げていた。
東京電力<9501>は13円高で2ケタの上昇。三菱重工<7011>は戦車用エンジンの開発・生産でトルコ企業との合弁を検討と報じられ3円高。三菱重工も含めた日本企業8社連合が航空機の生産革新でボーイングに協力するニュースもあり、それに参加する炭素繊維の東レ<3402>は5円高になっていた。中国で低価格の農機を販売するニュースでIHI<7013>は6円高。アジアの自動車生産拠点タイで自動車用超高張力鋼板を生産すると報じられたJFEHD<5411>は96円の大幅高だったが、新日鐵住金<5401>は1円高、神戸製鋼<5406>は3円高だった。
電通<4324>は200円の大幅高で年初来高値更新。金融や消費財のCMを中心に広告収入が大きく伸び、英国イージス社買収に伴うのれん代償却の問題を乗り越え通期は経常利益23%増の724億円で過去最高の見通し。しかし同業のアサツーDK<9747>は通期の営業利益見通しを下方修正しSMBC日興証券が目標株価を引き下げ、201円安で値下がり率3位。「お台場カジノ構想」で買われているフジメディアHD<4676>は73円高と続伸した。
大王製紙<3880>は通期見通しを下方修正し23円安。第一屋製パン<2215>は12月期の連結最終利益を4000万円から3億9000万円に9.8倍も上方修正して11円高で年初来高値を更新し値上がり率13位。値上がり率2位の中越パルプ工業<3877>は2時30分に発表した決算の内容が良く、前日終値近辺から26円高まで株価が急伸し終値は19円高だった。
前日の東急<9005>を最後に私鉄各社の9月中間期決算が出揃い、大手8社トータルで最高益というニュースが伝わった。3月の東横線と副都心線の直通運転効果が出た東急は通期見通しを上方修正して26円高。伊勢神宮の式年遷宮特需で潤った近鉄<9041>は3円高だった。
この日の主役は後場に次々と決算発表を行った建設セクター。日経朝刊が大林組<1802>の業績観測報道を行い、それが前場の各銘柄の株価を冷やす。9月中間期の営業利益が37%減の模様と伝えられた大林組は決算もその通りで、大成建設<1801>、鹿島<1812>とともに通期見通しを売上高を上方修正、営業利益を下方修正して18円安。大成建設は8円安。鹿島は営業利益の修正幅が-42%と多かったため発表後急落し24円安で値下がり率7位、日経平均マイナス寄与度2位になった。清水建設<1803>は中間期は増収増益で、通期見通しも据え置きで一時プラスだったが終値は2円安と連れ安した。大手ゼネコンは震災復興、国土強靱化、アベノミクスの財政出動の矢に東京五輪も加わり受注環境は非常にいいが、人手不足が深刻な労務費、円安の影響が出ている資材費に採算の足を引っ張られている。